ひとりで学ぶ着彩―平面図編
インテリアコーディネーター試験の二次試験向けの市販の教材では、着彩についても採り上げてはありますが、独学している人の腑に落ちるように詳しく解説しているものがなかなかありません。初めてチャレンジする人にもできるだけわかりやすい様に、ここで詳しく解説して行きたいと思います。
目次
1. きっちりベタ塗りする2. リアルな色で塗る
2.1色の選択が適切なだけで上手に見える
3.1. 窓からの光を表現する場合
3.2. 天井照明の光を表現する場合
4. よりリアルに見せる技法
1.きっちりベタ塗りする
まずはきっちり丁寧にベタ塗りするというテーマです。着彩のもっとも初歩的で基礎的な手法がベタ塗りではないかと思います。
最近のインテリアコーディネーター試験ではパースの着彩が出題される年もありますが、2021年のように平面図の着彩が出題される年もあります。パースの着彩に比べて平面図の着彩は取り掛かりやすいと思いますので、「平面図に試験合格レベルのベタ塗りをする」というテーマから進めて行きます。
ベタ塗りにも、丁寧で見やすいベタ塗りというものがあります。しかし頭っから「ベタ塗りはダメだ」という前提に立ってあらゆる着彩の指導をしているような指導者も居ます。特に年配の世代に多いように思います。私は、そう言う根拠がそもそもわかりませんし、指導の内容がウソっぽいな、なんて思っています。だって、そういう丁寧で見やすいベタ塗りで着彩してある図面ならば、着彩前の図面に比べて、読み手に対する設計者の意図の伝わりやすさがだいぶプラスされているではありませんか。そう思いませんか?
実は私自身、試験の本番で丁寧にベタ塗りをした答案を提出しました。合格できました。そのように丁寧にベタ塗りした理由は、そうすれば見やすい図面になると自分自身で実感したからです。その年に着彩する指示が出されたのは平面図でした。当時は持ち込みできる色鉛筆の色数が最大12色でしたので、さすがに色鉛筆の色そのままという訳には行かず、色の重ね塗りもしました。重ね塗りはしましたが、表現のしかたとしては、均一的なベタ塗りでした。また、インテリア産業協会の公式サイトに公開されている解答例は合格者のものと考えられますが、例年ベタ塗り的なものは結構多いです。このように、実際に合格する事も可能な訳ですから、自信のない人こそ、まずはこのベタ塗りの手法をきっちり詰めるという段階を確実にマスターする事をおすすめします。この段階をすっ飛ばしていきなりその上の段階の技術を習得しようとすると、かえってよく分からない表現になってしまう危険があります。
ただし、ベタ塗りの仕上げそのものは、テクニックをアピールできるような華やかさや面白みの要素が欠けているという事は確かです。ですので、ベタ塗りの方法で答案を作成する場合には、例えば端まで丁寧に塗って仕上げるとか、シャープな線でくっきりと丁寧に作図をするとか、華やかさや面白みのなさを補って採点者の好感度を上げたりするような、地道な努力にもきっちりと取り組んだほうが良いと思います。
それでは早速下の図を見て下さい。
これは、
- 床: 茶色
- ベッド: 水色
- デスク: こげ茶
- チェア: 青
の色鉛筆で洋室(ベッドルーム)の平面図をベタ塗りしたイメージです(実際にはCGで着彩しています)。
これは、ベタ塗りではありますが、隅々まできっちり着彩してしてあります。図面としての見やすさはありますし、時間が足りなくて途中で終わってしまったという感じもしません。
ただ、あまりインテリアの資料らしい雰囲気がありません。そしてどことなく、子供が描いた絵のような雰囲気が出てしまい、上手に見えません。なぜそう見えてしまうのか、その理由を次の章で見て行きましょう。
2.リアルな色で塗る
2.1色の選択が適切なだけで上手に見える
上と同じ図面で、しかも同じベタ塗りですが、使う色だけを変えてみます。
ベタ塗りであってもそうでなくても、実物に近い色で塗れば、それだけで表現が読み手に伝わりやすくなります。そのためには、見たものを「これはどんな色なのか」という見極めができるようにトレーニングしておきましょう。
ところで、「図面に白い部分を残さないように着彩しなさい」という指導者を結構見かけます。しかし私はその指導が適切だとは思いません。白い壁や白いシーツは白に見えます。発光している部分や光が反射している部分も白に見えます。そして解答用紙が白い紙ならば、何も塗らなければ白に見えるので、何も塗らない事によってその部分を白だと表現する事ができます。そういう部分まで無理に白以外の色を塗ろうとすると、逆におかしくなって、図面の読み手に意図が伝わらなくなりかねません。なのでわざわざ色を塗る必要はありません。そもそも、「図面に白い部分を残さないように着彩する」という事にまともな根拠や理論がありません。ただ名言っぽく聞こえそうな事を思いついたので言っているだけだと思います。根拠や理論がまともでない事に従う必要はありません。
むしろ、白い部分のまま残すというのは、それだけ着彩が少なくて済むので、時間が節約できます。ほとんどが白で、ほんのりと部分的に着彩してあるだけであるにもかかわらず、ちゃんと仕上げの材質のイメージが見て取れる様な図面ができるのなら、それはある意味上手な着彩方法だと思います。はじめのうちは時間内に完成させる事が難しいでしょうから、まさしくそういう時間のかかりにくい、全体的に白っぽい着彩の手法で時間内に完成しきれるように目指すというのは、合理的な攻略法だと思います。
ただもちろん、試験の採点者も、答案を何枚も採点していて、うっすらとした着彩ではモヤっとしているとか自信なさげだとかに感じる事もあるでしょうし、反対に濃い色で隅々まで着彩された答案は見ごたえがあってしっかり練習を積んできた答案のような印象を受けやすいでしょう。あるいは、やっつけ仕事でいい加減に受験しているのでなく、熱心に、真摯に答案作成に取り組んだ様に見えやすいと思います。ですから、はっきり、しっかりした着彩の方がどちらかといえば良いという事は言えると思います。製図と着彩が速く仕上げられるようになって、試験の制限時間に余裕が持てるようになったら、その余裕に応じて濃いめの着彩をして行けば良いのだと思います。
2.2「実物が想像しやすい」こと
話を戻します。どうすれば不自然ではない、リアルな色で塗る事ができるか、という事について、具体的な手法を見て行きます。
図1 図2 |
図3 図4 |
2.3 一次試験で勉強した色彩の理論を使う
2.4 色鉛筆18色のラインナップを工夫する
これまで見てきた様に、インテリアらしく見える色に着彩するには、全体的に彩度の低い色での着彩が中心になります。
その事について詳しく記事にしましたので、関心があれば読んでみて下さい。
[関連記事] インテリアコーディネーター試験の色鉛筆の合理的な選択のしかた
消しゴムで消せるので非常にお勧めです。
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陰影で立体感をプラス
ここからは、ベタ塗りをレベルアップする手法について解説します。ベタ塗りの図面に影の表現を追加する事で、平面図に立体感をプラスします。この影もまた、難しいテクニックの要らないベタ塗りによって追加します。難易度が低い割にクオリティは大きく向上すると思います。
ここからは、ベタ塗りをレベルアップする手法について解説します。ベタ塗りの図面に影の表現を追加する事で、平面図に立体感をプラスします。この影もまた、難しいテクニックの要らないベタ塗りによって追加します。難易度が低い割にクオリティは大きく向上すると思います。
早速事例を見てみましょう。2つのパターンがあります。
3.1 パターン1 (窓からの光を表現する場合)
BEFORE |
AFTER |
窓からの光に対してできる影を表現してみました。まず普通にベタ無理をして、その上からたった3箇所、下の図で示した箇所にベタ塗りで三角形の重ね塗りをしただけです。
ライトブラウンの箇所(①と③)はダークブラウンで、白の箇所(②)はライトグレーかミディアムグレーで塗るのが良いと思います。この図面上にはありませんが、もしもダークブラウンの箇所がある場合、そこは黒で塗るのが良いと思います。濃すぎると違和感が出ますので、塗り始めは薄めに塗って徐々に濃くして行くのが良いでしょう。
雰囲気を出すためには、次のような事を考えると良いと思います。
- 窓の中心から遠ざかる方向に直角三角形の斜辺を描く
- 薄くて長めの影にする
- 面積の広い影だけをピックアップして描き込んだだけでもそれらしく見える
- 斜めのエッジの線の部分は定規を使って塗るとよりシャープで上手に見える
窓からの光は、一般的に直射日光でなく天空光を表現するイメージが良いと思います。天空光の光は、窓面全体が発光し、そこから光が放射的に広がるような感じに近いです。しかし光は白い壁や天井など、色々なものに反射しますので、実際には窓の方向から入ってくる光ばかりでなく、色々な方向からの光が合成されたような光になります。影のラインができる方向は単純に窓の位置だけで決まるわけではなく、やや複雑です。日常的に、影のラインができる方向や影のラインの濃さなど、実物を観察して、雰囲気をつかんでおくと良いと思います。
さらに時間に余裕があれば家具と壁の間の細い隙間、デスク、チェアにも細かい影を足してみます。窓からの天空光は、白い壁など様々な場所に反射して、家具の影を作ります。実際の部屋ではどんなふうに影ができているか、観察してそれらしく見えるラインを研究してみて下さい。また、平面図では壁の表面を表現する事ができませんが、このように窓からの光が壁に反射しているかの様なラインで影を付けるということにより、壁が反射率の高い、白っぽい壁であるという事を暗に示す事にもなります。
3.2 パターン2 ( 天井照明の光を表現する場合)
通常はパターン1のように窓からの光を表現した方が自然だと思いますが、夜間など、天井の照明の光を表現するパターンです。
この図では、部屋の中心の天井に照明器具があると仮定しています。照明器具から遠い方に向かって影を描き込みます。この図では、3箇所に描いてあります。- 全体的には短めの影にする
- 高さがあるものの影を長くする(この図では、椅子の座面よりも背もたれの方が長いので、背もたれの方が長い影になっています)
- 照明器具(上の図では部屋の中心)から遠いものほど影を長くする
- 窓からの光を表現する場合よりも濃い目にする(光源からの距離が近いので、実際に濃い影ができます)
平面図に影をつけるテクニックの初歩に関しては以上です。
4.よりリアルに見せる技法
ここからは、よりリアルに見えるように、影を描き込んで立体感を出した平面図にさらに手を加えてみます。さすがに試験で合格するのには、前章までの内容ぐらいで十分だと思います。さらにクオリティを追求したい場合の参考としてみて下さい。
4.1 窓からの光の反射光を表現する
4.2 床の目地を表現する
床の目地を表現します。2021年の試験では、平面図に着彩する課題があったものの、床の目地は描かなくて良いとなっていました。今後必要になる機会があるかどうかは分かりませんが、参考として載せておきます。
先程追加した反射光の範囲に合わせて描き込みます。床全面に書き込むという方法もありますが、時間がかかりますし、文字や寸法を記入しづらくなってしまいますので、部分的に書き込む方が良いのかなと思います。そのように一部だけに描き込む場合、どこに描き込むかという判断は色々あると思いますが、目地は光が当たって明るい部分ほどはっきり見えて目立つものですので、明るい部分に書き込むのがリアルに見えて良いと思います。関連記事
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