ひとりで学ぶ着彩─残り時間が足りない場合の着彩
製図試験で計画をまとめるのに時間が掛かってしまう事はよくある事です。数多く練習を積めばそういう事も段々となくなってきますが、そんなに多くの練習をこなせる受験者ばかりとは限りません。
ここでは、試験の本番でプランニングに戸惑ってしまい、わずかになってしまった残り時間で着彩をしなくてはならない、という非常事態をどのように切り抜けるか、その手法を考えてみます。
時間が足りず、もはや図面全体を着色する事が難しい、という状態になってしまった場合でも、諦める事なく部分的にだけでも着彩するようにしましょう。さらに、もしも可能ならば、「部分的にしか着彩していないのに完成しているように見える」という仕上がりを目指すのが良いと思います。練習をすれば身につくテクニックですので、本番までにぜひとも練習しておく事をおすすめします。
実例で見ていきましょう。この様な部屋に着彩していきます。
1 家具(イス)を塗る
チェアを塗ります。グレーで塗るのには理由があります。最後のほうで分かりますので、続きを読んでみて下さい。デスクの天板は、塗る箇所を少なく済ませるため、白という事にします。
ここからしばらくはひたすら1色の色鉛筆だけで着彩して行きます。このようなピンチの状況で持ち替えの時間が省けますので、他の色と混ぜたり重ねたりしなくても、1色でベタ塗りするだけで木の材質に見える茶色系やベージュ系の色を、1本は持っておきましょう。
ベッドやデスクと壁の間の、狭くて暗い部分を塗ります。濃い目に塗ります。
床全体を塗ってなどいられません。部屋の中で窓から遠い部分の床だけを、筆圧の強弱でグラデーションを付けて塗ります。デスクとドアの間の辺りです。
大きな家具の影など、床の上に一番大きな影ができそうな部分を、床の色の色鉛筆一本で、グラデーションを付けて塗ります。ここではベッドの影の部分を塗りました。これぐらい色が付くと、どんなに厳しい採点官でも、着彩していないから採点の対象外だとはもう言えないぐらいの状態に達してきていると思います。エッジの部分は、問題用紙の端を使ってマスキングしても良いでしょう。最後にベッドの上にできる影をグレー1本で、筆圧の加減でグラデーションを付けて塗ります。イスの張り地と同じグレーです。ここまで、床のブラウン系の色とグレーの2色しか使っていません。これで完成です。もちろん、この時点で残り時間がもう少しあるならばさらに色を足した方がより良い仕上がりにできます。例えば床全体にもう少し薄っすらと色を付けて、濃く色を付けてある部分には筆圧を加減しながら控えめにダークブラウンを塗り重ねると、薄いという印象がいくらか軽減できて、塗り重ねによるリッチなトーンが少し出せると思います。あるいはデスクの天板を色相や彩度が少し異なるベージュやダークブラウンで塗るなどしても良いでしょう。とりあえず時間切れまでにこれぐらいまで色を付ける事ができたなら、全体的に色が淡い印象ではあるものの、完成できたのかな、という感じには見えるでしょう。