ひとりで学ぶ着彩─グラデーションの表現

 このウェブサイトでは、着彩のはじめのステップとして丁寧なベタ塗りの表現を習得する事を推奨してきました。関心のある方は下のリンクをご覧下さい。


「ひとりで学ぶ着彩─平面図編」
https://teridk.blogspot.com/p/blog-page.html
「ひとりで学ぶ着彩─アイソメ編」
https://teridk.blogspot.com/p/blog-page_1.html

ベタ塗りでも色の選択が適切であったり、実際の部屋であり得るような陰影の表現ができていれば試験の合格レベルにはまず十分だと考えられますが、さらに上のクオリティを目指すのに、グラデーションを使った表現を採り入れる事は効果的です。実際の室内では、均一的な濃さの影ができたり、光が当たった面の明るさが均一的になるわけではなく、徐々に色の濃淡や明暗が変化して見える場合がむしろほとんどですから、グラデーションの技法を適切に採り入れればよりリアルに見える事は間違いないでしょう。

ただしグラデーションの表現には塗り方の技術が必要です。そしてベタ塗りで表現した図面やパース図にもそれなりの見やすさがありました。グラデーションの表現を盛り込んだばかりにかえって下手な仕上がりに見えてしまったり、見づらいものになってしまう様では逆効果です。

はじめは控えめでシンプルな技法から盛り込む様にして、スキルの上達に合わせて無理なくステップアップしていくのが良いでしょう。

平面図にグラデーションの表現をプラス

下の様な洋室の平面図に実際にグラデーションの表現を取り入れた着彩をして行きます。


まずは家具に色を塗ります。私はここでたまたまそうしていすが、家具が最初でなくても構いません。塗りやすい順番を試行錯誤してみてください。なるべく色鉛筆を持ち替える回数が少なくて済む順序が良いと思います。


次に床を塗ります。せっかくグラデーションの話をはじめたというのに、いきなりベタ塗りです。しかしこの続きがありますのでこのまま読み進めて下さい。


窓からの光が届きにくい部屋の奥側のほうだけ、グラデーションでもう少し暗いダークブラウンを重ねました。ほんのりと控えめにしたので分かりづらいかも知れません。しかし、あまりはっきりし過ぎてしまうと、採光計画や照明計画がうまく行っていない部屋の様に見えてしまう場合がありがちですので、技術的にそこまで自信がある人意外は、控えめな表現が無難だと思います。


ダークブラウンのグラデーションの部分は、下の図の様に、部屋の奥の際から窓側の方向に向かって、徐々に力を抜くようなストロークで着彩すると良いと思います。また、グラデーションは、1方向に向けたり、放射状にしたりと、シンプルな方向性を決め、その方向性に従って表現するのがお薦めです。色々と気まぐれな方向に向けてグラデーションを付けてしまうと、かえってリアルさが失われたり、見やすさが損なわれたりする危険があります。

家具と壁の間の狭い隙間部分の床をダークブラウンで塗りました。ここは面積が狭いので、グラデーションでもベタ塗りでもあまり違いが分かりません。どちらでも構わないと思います。この箇所は実際に光が当たらず暗くなりますので、いずれにしても暗い色に見えるようにしっかりと暗い色に着彩しておくのがリアルに見せるコツです。



ベッド、イス、窓枠が床に作る影を表現しました。窓に近い側から遠い側に向かって力を抜くようにストロークすると良いと思います。こういう部分の着彩は、手際よくグラデーションで着彩すればベタ塗りをするよりもかえって短時間で着彩できる場合もあります。


窓枠がベッドリネンの上に作る影を表現しました。これで完成です。だいぶ立体感があって見栄えのする着彩表現になっていると思います。最後にベタ塗りで塗ったものと並べて比較してみましょう。

左がグラデーションつきで右がベタ塗りです。左のグラデーションの入ったもののほうが、影の付き方がより自然でリアルに見えると思います。平面図に着彩する出題の場合、図面としての用途もありますので、激しい濃淡を付けて絵画調なタッチに仕上げるよりは、この程度の濃淡で仕上げておくのが、図面としての見やすさを保っていて良いのかなと、個人的には思います。


アイソメ図にグラデーションの表現をプラス

まずはベタ塗りで着彩します。

このベタ塗りの着彩について詳しい事はこちらのページを見て下さい。

「ひとりで学ぶ着彩─アイソメ編」
https://teridk.blogspot.com/p/blog-page_1.html




大きい方の窓、つまりテラス窓から遠い部分の床に、グラデーションで暗さを表現します。



壁と天井、壁と壁、壁と床の間の、部屋の入隅部分をグラデーションをつけてわずかに暗くします。あまり濃くしてしまうと、薄暗い部屋のように見えてしまったり、壁が汚れているように見えてしったりするので、あまり濃くせず、ほんのりとニュアンスを付ける程度が無難だと思います。



グラデーションの表現の無い、ベタ塗りのものと並べて比較してみましょう。

大きく違っている訳ではありませんが、左側のベタ塗りのものはパリッと乾いたトーンであるのに対し、グラデーションの表現を足したものはしっとり馴染んだ様な雰囲気が出ているのではないでしょうか。
ここでは、初心者の人でも無理なく写実性をプラスできる事を重視して、あまり冒険せずに控えめな表現の仕方を扱ってきました。
アイソメ図や透視図などの立体パース図は、平面図等とは用途が違い、雰囲気を把握するためのものですので、絵画的なニュアンスがいくらか強めでも良いと思います。室内の各部分の陰影、明暗、見た目の色の濃淡を分析的に観察して着彩に反映させる事は欠かせないと思いますが、そのうえで多少冒険して、自分なりの表現をしてみても面白いのではないかと思います。


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