線の種類の使い分け(破線・点線・一点鎖線)

インテリアの図面に限らず建築図面は、枚数が多くなると取り扱いが大変になります。また、一枚だけを見て多くの種類の情報が分かるような図面だと、色々な情報を同時に加味して考えたい場合に何枚もの図面を行ったり来たりしなくて済むので便利です。
しかしだからといってひとつの平面上にやみくもに色々な情報を描き込もうとすれば、当然色々な線が重なってしまい、何が描いてあるのか分からなくなります。
なのでパターンの異なる線を使い分ける事により、同じ平面上に線が重なっても何を意図して描いてあるのかを理解できるようにする方法があります。
その線の使い分け方については、JIS規格で厳密に決めてあります。実務では、概ねJIS規格通りに運用されています。しかしそこまで杓子定規に従っているというものではなく、一般的に作図者の裁量がある程度許容されています。インテリアコーディネーター試験の図面はプレゼンテーション用の図面という位置づけですが、そうした用途であればなお、建築に詳しくない人にとっての見やすさやデザイン性なども考慮する必要がありますので、より自由度は高いのが一般的でしょう。
しかし、だからと言って根本的な部分までアレンジしてしまうと作図者以外誰も分からない図面になってしまいますし、試験であれば採点者が理解不能になってしまいます。ですので基本的な部分については、汎用性のあるルールをおさえておく必要があります。

建築図面でよく使われる線種

一般的に建築図面でよく使われる線には
  • 実線
  • 破線(点線)
  • 一点鎖線
  • 二点鎖線
があります。画像で見るとこの様な線です。

線種のサンプル図


実線以外の線も、線の太さと組み合わせてバリエーションを持たせる事が可能です。また、パターンのピッチの長短を変える事でも、異なるものを図示している事を表す事ができます。

参考記事「[平面図]線の太さの使い分け」

ニ点鎖線とは

二点鎖線についてはインテリアコーディネーター試験のプレゼンテーション試験で使うことは実際にはあまり無いと思います。ただ、図中に他のものと区別したい線をどうしても描き込みたい場合に使い分けが効きますので、知識として知っておくと良いと思います。
例えば、一階平面図兼配置図で屋根の軒先のラインを表す場合等で使われる事の多い線種です。しかし同じ線を通常の破線で表示するケースもよくあり、必ず使うというものではありません。

破線と点線の違いとは

破線と点線というのは、同じと考えて問題ありません。厳密に言うと、JIS規格では両者を区別しています。破線のほうは若干線の部分のピッチが長く、それに対して切れている部分のピッチが短いというパターンです。点線のほうは破線と比較すると線の部分のピッチが短く、それに対して切れている部分のピッチが長いというパターンです。しかし実務では両者を厳密に区別しておらず、有名なCADソフトのメーカーですら両者を区別してはいません。インテリアコーディネーター試験の問題には、例年破線と書いてありますのでここでも破線という言い方に合わせています。ただ、一般のお客さんと話す時などはむしろ、点線と言ったほうが誰でもわかりやすいと思いますので、普段はいつも点線と呼んでいれば良いのではないかと思います。

破線と一点鎖線はどんな時に使うのか

インテリアコーディネーター試験の二次試験の製図試験での、線種の使い分けに関する話しです。下に平面図と断面図のサンプルを用意しましたので参照しながら読んでみて下さい。

平面図の場合

破線を使う箇所

  • 実際には見えていないものを表現したい場合
  • 見下げの切断面よりも上(天井寄り)にあるものを描き込みたい場合
平面図は概ねフロアレベルから1.5m辺りを架空の面で切断して見下げて描いた図面です。
例えばデスクの袖に引き出しが付いているとしても、切断面から見下げると天板に隠れてしまって実際には見えません。これを平面図上に描き込んで表現したい場合は、破線で記入します。引き出しを最大限引き出すとどこまで来るのか、というラインを破線で示す事もできます。


吊戸棚、折上天井、ダウンライトなどはその見下げの切断面よりも上にあるので、本来見えないものです。しかし平面図に描き込んであればその存在や位置が分かって便利です。そのような描き込みをしたい場合に、切断面よりも上にあるものだという事が分かるように、破線で記入します。この平面図ではクローゼットのハンガーパイプにもその考え方を当てはめて、切断面よりも高い位置にあるという意味で破線で記入してあります。しかし仮に「家具の内側にあるものなので、外形線との違いを強調するために破線にした」という意図で破線にしたのだとしても、特に違和感はありませんし、家具の内側にあるハンガーパイプだと誰もが感覚的に分かり、支障がありません。「こうでなくてはいけない」と専門的な事にばかりこだわらず、世間一般の共感が得られる事なども考慮して柔軟に考えるのが良いでしょう。

一点鎖線を使う箇所

  • 通芯(とおりしん)や壁芯(かべしん)
  • ボイド(空間)を表現する場合
  • 領域を強調する場合
通芯や壁芯の話をします。通り心や壁芯は設計や施工に使う、図形的な基準となる線です。建築関連法規の面積計算にも使われます。これは通常一点鎖線で記入します。通り心は長いピッチの一点鎖線で記入します。一般的に平面図を描く上で通り心や壁芯は必須のものではありますが、しかしインテリアコーディネーター試験のプレゼンテーション試験で平面図を描く作業は一部の限定的な作業に特化しており、通芯や壁芯は登場しません。ある年から予告もなく急に登場するとは考えられませんので、受験対策としては特に知らなくても大丈夫です。
ボイドを表現する場合の話をします。この図面ではクローゼットと吊戸棚があります。それらの内部は空洞で収納スペースがあります。その事を示すために一点鎖線の斜線を引いています。この図面にはありませんが例えば床の一部が吹抜けになっている場合には、その吹抜け部分に一点鎖線で✕印を描いて分かりやすいようにします。ただインテリアコーディネーター試験では吹抜けを計画する事など無いと思いますので、受験者が自らそういう描き込みをする事は無いと思います。
領域を強調する場合の話をします。この平面図には折上天井がありますが、その領域を強調するために一点鎖線で✕印を描いてあります。これは、破線で描いた天井の部分を見上げ図として捉えた際のボイド部分だという風にも解釈できます。
領域を強調するというのは、例えば壁や建具で囲まれていない「ワークコーナー」「家事コーナー」「趣味のコーナー」などを計画する場合にも使えます。破線や一点鎖線でそのコーナーの外周を囲むだけでも良いのですが、一点鎖線で✕印を書き加える事でその領域をより分かりやすく目立たせる事ができます。
これらの一点鎖線はボイドであれ領域の強調であれ、無くてはダメというものではありません。あるいは一点鎖線で描く代わりに実線の細線で描いても支障はありません。一点鎖線で描くと、もちろん他の線種と区別が付くので分かりやすくもなりますし、建築図面らしい雰囲気が出ますので、玄人ぶってスカすにはぴったりだと思います。

断面図・立面図・展開図の場合

破線を使う箇所

  • 実際には見えていないものを表現したい場合
  • 断面線よりも手前にあるものを表現したい場合
実際には見えていないものを表現したい場合の話です。平面図の場合と同様です。例えばこの断面図のクローゼットの棚板や、ハンガーパイプの断面を描き込みたい場合に、破線で記入します。
断面線よりも手前にあるものを記入したい場合の話です。平面図の時と同様に、破線で記入します。ただし実際にはめったに無いと思います。そもそも、断面図・立面図・展開図の図面には、切断面よりも手前にあるものを記入する事によって何か便利になるというケースがそう滅多にありませんので、いずれもかなりレアです。

一点鎖線を使う箇所

  • ボイドの部分
  • 開き戸の吊元の表示
ボイドの部分の話です。例えば三方枠や四方枠が見付で見えている部分や、キッチンの対面式カウンターと吊戸棚との間の部分などには一点鎖線で✕印を描くと、向こう側に抜けているというのが分かりやすくなります。
開き戸の吊元の表示の話です。開き戸の、ヒンジがある方を吊り元と言いますが、見付(正面向き)でどこが吊元か、というのを示したい場合は、ラインを描き込んで表示します。そのラインを一点鎖線にするのが一般的です。「線が開いているほうは扉が開く(吊元でない)ほう」というルールです。向こうに押して開くのか、手前に引いて開くのか、という記号は特にありません。これも必ずしも一点鎖線にせず、実線の細線で描いても支障はありません。しかし一点鎖線にすると他の線と区別が付きやすいですしなんとなくいかにも建築をやっているという雰囲気が出ます。玄人らしい所を見せつけてスカしてやりたい時にはおすすめです。


インテリアコーディネーター試験では以上の線種の使い分けができていれば十分だと思います。また使い分けの仕方は必ずしもこの通りでなくても良いと思います。日本語を話す時に、完全な標準語でなく多少方言が混ざっていたとしても意味が通じれば支障が無いのと似ています。大切なのは、作図者の独りよがりにならず、読み手の理解しやすさに配慮して描くという事ではないかと思います。

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