2021年の問題を深掘り(2)結局コーブ照明はどうすればよかったのか
インテリアコーディネーター試験の2021年二次試験(過去問題)の解説です。
プレゼンテーション試験の依頼主の要求条件には、東面のキャビネットに関し、「上部にコーブ照明を設置する」とありました。
公式サイトには2つの解答例が公開されていますので、どの様な設計をしたのか確認をしてみたところ、いずれもコーブ照明ではない物が設計されていました。
2者いずれの解答例もおそらく合格者のものでしょうから、これぐらいの解答ができていればOKなのね、という事でさほど気にならない人も居るかと思いますが、一方でモヤっとしたままの人も居ると思います。
そこで、非公式ながら、当ウェブサイトなりの「ちゃんとコーブ照明でありながら、妥当な設計をするにはどうすればよかったのか」を深掘りして考えてみます。
参考記事 『[一次試験] 振り付けで覚えるコーブ照明とコーニス照明の違い』
もう片方の解答例は光源が直接見えない高くて奥まった場所に配置されており、間接照明ではありますが、天井と家具との隙間から真横に向かって照射する様に設計されていて、コーニス照明を90度倒したようなものです。天井に向けて光を当ててそれを反射させるコーブ照明とは異質な形状です。
2者いずれもコーブ照明ではないので、この部分だけに関して厳密に言えば条件通りでなく、不適切な設計だと言えます。インテリア産業協会も、2つの解答例を載せるのならばせめてどっちか片方は適切に設計されたものにしておいてくれよ、と思います。
依頼主の要求条件をよく読むと「キャビネットを設け、上部にコーブ照明を設置する」と書いてあります。推測ではありますが、2者ともこれを「上のほうにコーブ照明がくっつけられたキャビネットを設ける」という読み方をしてしまったのかも、という気がします。たしかにこの書き方だとそういう意味にも読めてしまいます。他には、「キャビネットはキャビネットでまず設け、位置関係としてその上部近辺にコーブ照明を設置する」とも読める訳ですが、なんとなく一般的に考えるとこの後者のような気が私はします。なぜならコーブ照明は天井照明の一種で、収納家具のキャビネットとはそこまで近い縁の親戚のような存在ではないからです。もちろん悪いのは読み手ではなくこういうダブルミーニングの文章を書いて試験問題にしてしまう方ですが、資格試験ではよくある事です。そんなに熱心で気合の入った運営者ばかりではありません。
ただ、どちらの意味に捉えたとしても、天井と壁の入隅の部分に、キャビネットの上端と天井面との間の300mmという程よい空間ができるわけですから、その空間を利用してキャビネット→コーブ照明→天井と、隙間なく合体させたようなコンセプトで設計したくなるというのは状況からすればごく自然だと思います。そこに関しては解答例の2者はまさに両者とも共通してその様に設計していますし、そうしたコンセプトそのものに問題が在るわけではありません。
ただ、その様なコンセプトで計画したときに、ちゃんとコーブ照明になっている納まりを考えるのは少々難易度が高いのかも知れません。それでも条件は条件ですから、コーブ照明はしっかりコーブ照明として設計するのが適切です。コーブ照明がどんなものか忘れてしまったのでなんとなくごまかして設計してみた、という可能性も考えられますが、そうしなくて済むように一次試験の勉強で得た知識を忘れないようにしっかりとキープし続けておく事が大切です。
公式サイトには2つの解答例が公開されていますので、どの様な設計をしたのか確認をしてみたところ、いずれもコーブ照明ではない物が設計されていました。
2者いずれの解答例もおそらく合格者のものでしょうから、これぐらいの解答ができていればOKなのね、という事でさほど気にならない人も居るかと思いますが、一方でモヤっとしたままの人も居ると思います。
そこで、非公式ながら、当ウェブサイトなりの「ちゃんとコーブ照明でありながら、妥当な設計をするにはどうすればよかったのか」を深掘りして考えてみます。
そもそもコーブ照明って何だっけ?
コーブ照明は、折上天井の側面部分に仕込む間接照明で、天井高が高い部分の天井面を照らす照明です。参考記事 『[一次試験] 振り付けで覚えるコーブ照明とコーニス照明の違い』
解答例はどのように不適切なのか?
片方の解答例は光源が完全に露出してしまっていて間接照明でありません。しかし、天井面を照らすような向きで計画されてはいます。もう片方の解答例は光源が直接見えない高くて奥まった場所に配置されており、間接照明ではありますが、天井と家具との隙間から真横に向かって照射する様に設計されていて、コーニス照明を90度倒したようなものです。天井に向けて光を当ててそれを反射させるコーブ照明とは異質な形状です。
2者いずれもコーブ照明ではないので、この部分だけに関して厳密に言えば条件通りでなく、不適切な設計だと言えます。インテリア産業協会も、2つの解答例を載せるのならばせめてどっちか片方は適切に設計されたものにしておいてくれよ、と思います。
依頼主の要求条件をよく読むと「キャビネットを設け、上部にコーブ照明を設置する」と書いてあります。推測ではありますが、2者ともこれを「上のほうにコーブ照明がくっつけられたキャビネットを設ける」という読み方をしてしまったのかも、という気がします。たしかにこの書き方だとそういう意味にも読めてしまいます。他には、「キャビネットはキャビネットでまず設け、位置関係としてその上部近辺にコーブ照明を設置する」とも読める訳ですが、なんとなく一般的に考えるとこの後者のような気が私はします。なぜならコーブ照明は天井照明の一種で、収納家具のキャビネットとはそこまで近い縁の親戚のような存在ではないからです。もちろん悪いのは読み手ではなくこういうダブルミーニングの文章を書いて試験問題にしてしまう方ですが、資格試験ではよくある事です。そんなに熱心で気合の入った運営者ばかりではありません。
ただ、どちらの意味に捉えたとしても、天井と壁の入隅の部分に、キャビネットの上端と天井面との間の300mmという程よい空間ができるわけですから、その空間を利用してキャビネット→コーブ照明→天井と、隙間なく合体させたようなコンセプトで設計したくなるというのは状況からすればごく自然だと思います。そこに関しては解答例の2者はまさに両者とも共通してその様に設計していますし、そうしたコンセプトそのものに問題が在るわけではありません。
ただ、その様なコンセプトで計画したときに、ちゃんとコーブ照明になっている納まりを考えるのは少々難易度が高いのかも知れません。それでも条件は条件ですから、コーブ照明はしっかりコーブ照明として設計するのが適切です。コーブ照明がどんなものか忘れてしまったのでなんとなくごまかして設計してみた、という可能性も考えられますが、そうしなくて済むように一次試験の勉強で得た知識を忘れないようにしっかりとキープし続けておく事が大切です。
それで結局はどう設計するのが妥当だったのか、具体的な設計の例をいくつか独自に考えてみました。問題文を読む限り、ただひとつのパターンに集約されるとは限らず、妥当な設計として許容される解答には何通りものバリエーションがあるのではないかと考えられます。「独学で解いてはみたけれど、見本と違っていて自分の設計が妥当なのかどうか分からない」という人は、ここで類似しているものが見つかるかも知れませんので参考に覗いてみて下さい。
キャビネットの直上の天井を300mm下げてCH=2100の下り天井(さがりてんじょう)とし、下り天井のラインをキャビネットのツラのラインと合わせた計画です。公式サイトの2つの解答例も基本的にはこの線の発想だと思います。おそらくこうした方向性での計画をした解答者の数が多いのではないかと思います。ただ、条件をきっちりと設計に反映するうえでは、コーブ照明と言っている訳ですから、「天井を照らす間接照明」という設計にする必要があります。
リビングのソファの位置から見てキャビネットの少し手前側に、もとのCH(2400mm)よりもいくらか低い下り天井のスペースを設け、その下り部分にコーブ照明を配置する設計です。1.の計画の、コーブ照明が少し手前に持ち出された形とも取れます。構造的には、コーブ照明部分をキャビネットの棚の上に乗せて支持させるという設計にするのではなく、天井の軽天工事で野縁を組み直して吊りボルトで支持された下り天井を作るというのが適切でしょう。この様に下り天井の部分を少し設けると、コーブ照明の「らしさ」がいくらか際立つと思います。下り天井部分のCHは必ずしもキャビネットの上端の2100mmに揃える必要はなく、2200や2300程度の寸法であっても良いでしょう。下り天井部分の面積を大きく設計する場合、その下り天井にダウンライトを配置するなど、下部の明るさを確保する照明を計画するのが適切でしょう。
「コーブ照明は折上天井の折上部分に設けるもの」というイメージを強く持っている設計者だと、この様な設計がはじめに思い浮かぶ事もあり得るでしょう。要求条件は「キャビネットの直上に」だとか「キャビネットと一体化した上部に」とは言っておらず、ただ単に「キャビネットの上部に」とだけ言っていますので、こうした設計も許容範囲ではないかと考えられます。紛れもなくコーブ照明らしいコーブ照明を設計する事が可能なコンセプトです。的確に製図で表現をするのはいくらか難しめです。
他には、上級者向けではありますが、下り天井にせず、CHが2500程度になるように天井ふところの中に向かって折上天井の部分を作り、そこにコーブ照明を設置するという設計も考えられます。設問-2に「室内に梁型の露出はないものとする」とありますので、キャビネットの上部に大梁の存在を想定する必要はありません。東側の妻壁に内蔵梁があるような構造でも想定されているのでしょう。小梁のある構造だとしても、スパンの中央付近に配置するでしょうから、LDKよりも北寄りの、部屋の外にあるのが普通です。キッチンや浴室まわりの位置関係からすると、排気ダクトがリビングのこの辺りに回ってくる事も考えられません。コスト重視で建てられたマンションの場合は野縁天井でなく天井=上階のスラブである可能性も考えられますがそれは少数派であり、問題文中にもそうした記載はありません。これらの事から一般的に考えて原状の天井ふところに100mm程度折上げるぐらいの余地はあるという仮定で設計しても非現実的ではないでしょう。現在はスリムなLEDバーライトやテープライトといった光源がありますので、100mmも折り上げれば、コーブ照明を計画する事は可能です。むしろ実務ならば、少しでも広々として開放感のある住まいが好まれるのが一般的な訳ですから、下がり天井よりも先にこのように天井ふところのゆとりを使う事をまず第一に考える、という設計者は多いのかも知れません。きっと私自身もそう考えて天井裏について調べる事から始めると思います。
妥当だと考えられる解答のサンプル
1.折上天井(下り天井)の縁と壁面のツラを合わせる設計
平面図 |
立面図・断面図 |
キャビネットの直上の天井を300mm下げてCH=2100の下り天井(さがりてんじょう)とし、下り天井のラインをキャビネットのツラのラインと合わせた計画です。公式サイトの2つの解答例も基本的にはこの線の発想だと思います。おそらくこうした方向性での計画をした解答者の数が多いのではないかと思います。ただ、条件をきっちりと設計に反映するうえでは、コーブ照明と言っている訳ですから、「天井を照らす間接照明」という設計にする必要があります。
2.キャビネットの少し手前に下り天井を計画し、その下り部分にコーブ照明を設置する設計
平面図 |
立面図・断面図 |
リビングのソファの位置から見てキャビネットの少し手前側に、もとのCH(2400mm)よりもいくらか低い下り天井のスペースを設け、その下り部分にコーブ照明を配置する設計です。1.の計画の、コーブ照明が少し手前に持ち出された形とも取れます。構造的には、コーブ照明部分をキャビネットの棚の上に乗せて支持させるという設計にするのではなく、天井の軽天工事で野縁を組み直して吊りボルトで支持された下り天井を作るというのが適切でしょう。この様に下り天井の部分を少し設けると、コーブ照明の「らしさ」がいくらか際立つと思います。下り天井部分のCHは必ずしもキャビネットの上端の2100mmに揃える必要はなく、2200や2300程度の寸法であっても良いでしょう。下り天井部分の面積を大きく設計する場合、その下り天井にダウンライトを配置するなど、下部の明るさを確保する照明を計画するのが適切でしょう。
3.キャビネットの手前に下り天井のスペースを作り、その下り天井の内側に折上げ天井を設け、折上部分にコーブ照明を設置する設計
平面図 |
立面図・断面図 |
「コーブ照明は折上天井の折上部分に設けるもの」というイメージを強く持っている設計者だと、この様な設計がはじめに思い浮かぶ事もあり得るでしょう。要求条件は「キャビネットの直上に」だとか「キャビネットと一体化した上部に」とは言っておらず、ただ単に「キャビネットの上部に」とだけ言っていますので、こうした設計も許容範囲ではないかと考えられます。紛れもなくコーブ照明らしいコーブ照明を設計する事が可能なコンセプトです。的確に製図で表現をするのはいくらか難しめです。
4.その他
他には、上級者向けではありますが、下り天井にせず、CHが2500程度になるように天井ふところの中に向かって折上天井の部分を作り、そこにコーブ照明を設置するという設計も考えられます。設問-2に「室内に梁型の露出はないものとする」とありますので、キャビネットの上部に大梁の存在を想定する必要はありません。東側の妻壁に内蔵梁があるような構造でも想定されているのでしょう。小梁のある構造だとしても、スパンの中央付近に配置するでしょうから、LDKよりも北寄りの、部屋の外にあるのが普通です。キッチンや浴室まわりの位置関係からすると、排気ダクトがリビングのこの辺りに回ってくる事も考えられません。コスト重視で建てられたマンションの場合は野縁天井でなく天井=上階のスラブである可能性も考えられますがそれは少数派であり、問題文中にもそうした記載はありません。これらの事から一般的に考えて原状の天井ふところに100mm程度折上げるぐらいの余地はあるという仮定で設計しても非現実的ではないでしょう。現在はスリムなLEDバーライトやテープライトといった光源がありますので、100mmも折り上げれば、コーブ照明を計画する事は可能です。むしろ実務ならば、少しでも広々として開放感のある住まいが好まれるのが一般的な訳ですから、下がり天井よりも先にこのように天井ふところのゆとりを使う事をまず第一に考える、という設計者は多いのかも知れません。きっと私自身もそう考えて天井裏について調べる事から始めると思います。
試験でも、こうした事をふまえて、CH=2500程度の折上天井を設計してもおそらく許容されると思われます。しかし安全のために、何の断りもなくその様な設計にして答案を提出してしまうのでなく、こうした前提のうえに設計したという事を図面に付記しておくのが安心でしょう。ただ、だいぶ上級者向けだと思いますし、その様にわざわざ付記を書き込むのも面倒なので、下がり天井にする設計が思いついた人はそちらを取った方が試験向けには解答しやすいでしょう。