[一次試験] なぜ手すりの高さを間違えてしまうのか?

[関連する過去問題]

2019年(第37回)第49問2

2020年(第38回)第34問3

なぜか覚えられない手すりの高さ

手すりの高さがなぜか覚えられない、覚えたつもりなのになぜか間違ってしまう、という人が多いと思います。

「手すりの高さは110cm以上必要なのではなかったっけ?」

「80cmぐらいではなかったっけ?」

それには理由があります。2つの異なるものが、同じ「手すり」という名前で呼ばれているからです。

ひとつは、階段や廊下を歩く時に手を滑らせながら時折つかまるものです。下の写真のものです。


ハンドレールです。これを「手すり」と呼びます。これは、床の表面や階段のステップ(踏面)から80cmぐらいの高さに取り付けるのが平均的な体格の人にちょうどいい高さです。身長の低い人や、姿勢が前かがみの高齢者にとっては、もう少し低いほうがつかまりやすい場合も考えられます。

もうひとつは、バルコニーや屋上広場や屋外に開放された廊下などに取り付ける転落防止のためのガードです。柵やフェンスや腰壁の仲間です。これも「手すり」と呼びます。下の写真のものです。

この手すりはマンションでは特に多く見かけます。マンションには通常バルコニーを作ります。そこでこの手すりが必要です。また、共用の廊下にもこの手すりがよくあります。共用の廊下は、室内化した廊下とするよりも、バルコニーと同じ様に開放性のある設計にすることで、色々な法規をクリアしやすくなり、建設のコスパが高まります。写真のようなガラスのものが最近流行っていますが、鉄筋コンクリート製でタイル貼りのもの、アルミのルーバータイプのもの、アルミの縦格子のもの、スチールに塗装をしたものなど、様々な素材やデザインのものがあります。

建築基準法施行令126条1項で「屋上広場又は二階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが一・一メートル以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。」と定められていて、この条文を根拠に1.1メートル以上の高さの手すりが取り付けられます。

下の写真などは、「手すり」に「手すり」が取り付けてあります。


手すりon手すりです。こういう場合もあります。

もしも階段でつかまりながら歩くための手すりを床や踏面から1.1メートルの高さに取り付けてしまうと高すぎてつかまりづらくなります。

反対にバルコニーの手すりの高さが80cmだと、低すぎて怖いと感じます。これは法令違反のため実際に体験する事は難しいです。しかし屋内の吹き抜けに関してならば、特に法令で規定していないので稀にそれぐらい低い手すりの場合があります。また、足場に関しては労働安全衛生規則で上段の手すりの最低の高さを85cmと定めているので、法令ぎりぎりに取り付けた場合だと80cmにだいぶ近いです。それぐらいの高さだと心なしか低くて、心細いように感じます。JR御徒町駅の山手線内回りと京浜東北線北行のホームのホーム階段に、おそらく高さ80cm前後と思われる低い手すりがあります。興味がある人は転落に十分注意して見てみて下さい。恐怖感があります。

これまでなぜか手すりの高さが覚えられなかったという人は、これら2つの手すりの存在について認識することでスッキリ覚えられるのではないでしょうか。

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