頻出用語・4つの「框」を整理しましょう
框(かまち)という用語は色々な場面で使われます。造作でも建具でも使われて混同しやすいので、ひっかけ問題の定番的によく出題されます。
インテリアコーディネーターの一次試験では2019年・2020年・2021年と連続して出題されており、2019年と2021年に関しては複数の問題で繰り返し登場しています。こういった傾向から、今後も頻繁に出題される可能性は大きいと考えられます。
框とは何か
框という呼び名の造作材は色々な場所に取り付けられます。さらに造作材だけでなく建具の名称にも「框」と付くものがあります。「框とは何か」とシンプルに言い表すのは困難です。しかし、それでもなんとかして「框」という言葉が使われるものに対して共通点を探そうとすれば、次のようなことが言えると思います。
呼び名に「框」という言葉が含まれているインテリアの用語について、ひとつひとつを区別しながら試験に登場する4つの「框」を明確に覚えて行きましょう。
1.框戸(かまちど)
框戸というのはドアの一種です。框という部材で周囲に枠を組んで、その中心に鏡板と呼ばれる板をはめ込んだ構造のドアの事を言います。基本的に、外周の部分に厚みがあり、中央部分がそれよりも薄いという構造になります。
これに対して、枠を組んでその外側に薄い板を貼り付けた、全体的にフラットな構造(フラッシュ構造)のドアはフラッシュ扉と呼ばれます。
框戸とフラッシュ扉はドアの構造としては非常に一般的なもので、今日使われる扉の大半はこれら2つのどちらかの構造です。
ところでネットで検索すると、「框戸はフラッシュ扉と違って重厚感がある」という様な説明がたくさん出てきてしまいますが、まるで妥当な説明ではありませんので気をつけて下さい。
框戸というのは、構造による分類です。様々な素材を使って框戸は作ることができますので、たしかに重い素材を使用したものやどっしりした趣を感じさせるものもできますが、反対に軽量なものや軽やかな雰囲気を感じさせるものも、設計次第では作ることができます。
例えば、アルミで框を組んでポリカーボネートの鏡板をはめ混んだものもれっきとした框戸です。そんな軽さの代名詞のような建具に重厚感を感じるのならばその感性はどうかしていますし、建築の設計者がガラスの鏡板の框戸を配置する時は、むしろ軽快感を得たい場合が多いです。
反対に、今日のマンションの玄関扉のほとんどや、それ以外の住宅の既成玄関ドアの多くが金属製のフラッシュ扉ですが、それらはどう見ても重厚感という表現がしっくり来ます。
「框戸はフラッシュ扉に比べて重厚感がある」というのは、例えば「おやつはごはんに比べて甘い」と言っている様な、かなり荒っぽい偏見だと思って下さい。
(追記)─令和三年試験の第33問で、框戸には重厚感があるという事を前提にした文脈の出題がされました。上に書いた通りそうは言えないというのが正確な情報ではありますが、インテリアコーディネーター試験に合格するにはその様な意見に合わせると割り切って下さい。
2.上がり框(あがりがまち)
上がり框は、玄関の土間と1階のフロアレベルとの段差部分に設ける造作部材です。段差部分を正面や上方から見た時に見栄え良く納めるためのものです。必ずしも必要な部材ではありませんが、日本の木造建築では伝統的に上がり框を設ける納まりが一般的でした。今でもとても一般的です。今日新築物件として設計されるマンションでも、上がり框を設ける納まりが採用される場合が多いです。住宅の玄関で靴を脱ぐ文化のわが国ならではの造作材とも言えるでしょう。
ところで、東南アジアの国々も日本と同様に住宅の玄関で靴を脱ぐ習慣の国が多いですが、マンションの玄関の設計は日本のそれとは違って欧米スタイルの場合が多いです。玄関ドアが内開きで、玄関に土間も上がり框的な段差も無く、玄関ドアの沓摺より内側はただもうひたすら室内と同じフローリングやタイルという設計です。框の存在に慣れている日本人からすると脱いだ靴の置き場所に困りますし、部屋の床に玄関からの砂埃が侵入しやすくてやっかいです。
3.床框(とこがまち)
床框は、床の間を構成する造作部材のひとつです。床面はステージの様に部屋の畳の仕上がり面よりも一段高くなっているのですが、その上がった部分の正面向きの部分に取り付けます。目につく部分ですので、木目の美しい材が好まれます。いわゆる銘木材を使うここぞという箇所のひとつで、潤沢な予算がある場合は、お金の掛けどころになります。
4.上段框(じょうだんがまち)
例えば2階建ての家の階段の最上段というのは、2階の床でもあります。2階の床に階段が接続する部分は2階の床が切れた状態になるわけですが、その切れている部分を何かしらの納まりに仕上げることが必要です。その納め方として、切れている端部に2階床の仕上材(フローリング材やカーペット)とは異なる、見切材兼ステップを取り付けるという方法があります。よくある一般的な納まりのひとつです。その見切材兼ステップの部材を上段框といいます。
上段框は必要不可欠な部材というわけではありません。上段框を設置しない納まりの設計も色々とあります。日本風の木造の場合には設置することが多く、反対に木造以外の構造種別ではほとんどの場合設置しません。さらに木造であれば必ず設けるというものでもありません。特に洋風の建物やモダンな雰囲気の建物の場合には、木造であっても上段框を使って納めるという設計ではなく、違う納まりの設計にする事がよくあります。