[一次試験] クリアラッカーとウレタンニス
2021年(第39回) 第19問
これは適切か不適切か?
1 薄い突板張りで木目の綺麗な家具には、透明塗料で表面保護の為に塗膜を厚く塗ることができるクリヤーラッカー仕上げがある
(著作権がありますので文言は少し変えてあります)
正解:不適切
解説
たしかにラッカーには透明のものが多いため、なんとなく適切そうなイメージがあるかも知れませんが、不適切です。
ポイントは2つあります。
- ラッカーは基本的に耐久性がなく、家具のような実用品には向かない
- ラッカーでは塗膜を厚く塗ることができない。
ほとんどの人は小中学校の工作で木にニスを塗った経験があると思いますが、そのニスがこのラッカーであった可能性が大きいです。ラッカーは単価が安く、DIYの初心者にも比較的仕上がりよく塗りやすい、手軽な塗料です。
ニス(ワニス)というのは透明な塗膜を作る仕上げ塗料の総称です。ラッカーもニスの一種です。ラッカーは歴史が古いです。今日ではもっと耐久性のある後発のニスが増えたため実用品の塗装にあまり使われなくなりましたが、ラッカーぐらいしか無かった昔は、そんなラッカーが実用品であろうが何から何まで使われているような時代がありました。例えばテーブルの天板の仕上げとして塗装した場合などでは、尖ったものや硬いもの、熱い食器などで塗装がすぐに剥がれてしまいました。ですので気をつけて丁寧に扱ったり、メンテナンスの再塗装をしたりしていました。
ただそのように使い込んで変化する特性を味として捉えたり、またラッカーならではの独特の塗膜感というのもありますので、ビンテージ感にこだわりのあるお洒落な人は今の時代に敢えてラッカー塗装の家具を使う場合もあります。
とはいえ、そのようにお洒落にこだわる特殊な製品といえます。より多くの人が使う実用品には耐久性のある塗料の方が好まれます。現在はラッカーはそういう、実用的な家具製品にはほとんど使われず、装飾品的なものや楽器などで使われるというように、用途がかなり限定されています。
では逆に、実用的な家具などではどんなニスが使われているのかというと、筆頭格はウレタンニスです。
ラッカーとウレタンニスをセットで覚えておくと試験で役に立つ場合が多いと思います。ウレタンニスは幅広く流通しており、単価はラッカーよりはいくらか高いですが、割と手頃なほうです。美しい仕上がりに塗装するには、ラッカーよりもいくらか気を遣います。
ラッカーとウレタンニスとでは固まる仕組みが違います。
ラッカーは下の図のように、塗料に含まれる溶剤が揮発して固まります。水性ラッカーというものもあります。油性の溶剤を含んでいる場合は特に、塗面が溶けたりしない材質かどうか、確認しておく事が必要です。
ウレタンニスは下の図のように空気に触れると反応が起きて硬化します。ウレタンニスは、厚くて耐久性のある塗膜が作れます。水に強く、熱にもある程度耐えます。熱々のコーヒーの入ったマグカップやラーメン丼を載せた程度ではダメージを受けません。基本的にクリアの透明感が高くつややかに仕上がります。経年により黄変する場合が多く、木材の上に塗装した場合などはビンテージ感のある色の変化が楽しめます。つや消しタイプを使ったり、ヤスリがけをしたりする事によってツヤの状態を好みに合わせてコントロールする事ができます。ウレタンニスにも水性ウレタンニスがあります。
ニスに関しては最初はこのラッカーとウレタンニスの2種類の特徴を対比して覚えておく事をおすすめします。ニスには、これらの次ぐらいに出題される可能性の高そうなセラックニス(ラックニス、シェラックニス)やアクリルニスなど、他にも色々な種類がありますので、余力のある人はさらに他の種類についてもひと通りの特性を覚えておくと良いと思います。