論文試験―文章の形式を考える

インテリアコーディネーター試験の論文試験は、内容も当然大切ですが、回答の形式や要件を守るといった事も大切です。
というのも、回答ルールに反したものを書いたり、採点者に意味が理解できないものを書けば、採点の対象にさえしてもらえない危険があるからです。

具体的にどんな事が大事かと言うと、
  • 指示されたルールを守る
  • 読み手に伝わる回答のしかたをする
これらが大事です。順番に見ていきましょう。
文章を考えている人のイラスト


指示されたルールを守る


試験の採点方法は明らかにされていないため断言はできませんが、論述式の試験の採点方法について一般的に言えば、形式上ひと目で分かるような回答ルールの違反があると、直ちに採点の対象外としたり、あるいは機械的に大減点をする場合が多いです。
インテリアコーディネーター試験だけが全く違う特殊な採点をしているとも考えにくいので、こうした一般的な採点方法を踏襲しているという想定で対策を考えるのが無難でしょう。論文試験で、こうした形式的な違反とならないために気をつけるべき基本な事には、次の2つがあります。
  • 文字数を守って回答する
  • 指示された通りに回答する
具体的にはどの様に回答すれば良いのか、それぞれを順番に掘り下げて見ていきましょう。

    文字数を守って回答する


    過去の試験では、論文の文字数が指定されてきました。文字数の制限が急に撤廃されるとは考えにくく、文字数を指定する出題のしかたは今後も当面続くと考えられます。指定された文字数は、必ず守るように心がけましょう。
    例えば2019年の試験では、550~600字の指定でした。これ位の文字数は、論文試験としてはかなり少ない文字数です。試しに書いてみると、あっという間に制限文字数に達してしまい、600字をオーバーしない様にするのに神経を使った、という人がけっこう多いのではないでしょうか。
    600字をオーバーしてはいけない、というのと同時に、550字に満たないものももちろんダメです。
    二次試験の試験時間や問題数に関して大きな変更が無ければ、論文の文字数制限に関しては、今後もこれぐらいの文字数から大きく変わりはしないと考えられます。
    本番までに、何度か同じ位の文字数の作文を実際に書いてみて、文字数のボリューム感覚をつかんでおくようにしましょう。
    オマケの話ですが、2019年の試験では「550~600字で」と指定されました。「◯◯字」という場合、「、」や「。」や「・」は含まれません。これがもしも「◯◯文字」という場合は、「、」や「。」や「・」は含まれます。ただし、検定試験などでは、もしも「◯◯文字」としてしまうと採点官がカウントしにくい(もはやカウントできない)ので、現実的に「◯◯文字」と出題されるケースは考えにくく、ほとんどの試験は「◯◯字」で出題されます。

    指示された通りに回答する


    指示された通りとはつまり、「◯◯について書きなさい」と言われたら、ブレずにその事について芯をとらえて書くという事です。それ以外の事について書かない様にしましょう。別の言い方をすれば「論点をずらさない」とか「要求に応える」とかいう事です。例文を見ながら考えていきましょう。
    2019年の試験では、次の様な出題がありました。


    加齢による身体機能の低下を考慮して住まいのインテリアを計画する場合に、以下の 3 つの点それぞれについて一般的に配慮すべきことを、所定の解答欄に550~600字で記述しなさい。

    ◦筋力の低下
    ◦視覚機能の低下
    ◦聴覚機能の低下 (※著作権があるため多少言葉遣いを変えてあります)


    順に見ていくとまず、「加齢による身体機能の低下を考慮して住まいのインテリアを計画する場合に」とあるので、その事について書きます。例えば年齢が若くて障がいがあるという人をも含めたバリアフリーの事を書いたり、あるいは身体機能の事ではなく高齢者の感性や好みを満足させる事について書いたりすると、少なくとも高得点は得られないでしょう。まずは作文のテーマに注意しましょう。

    さらに問題文には「以下の3つの点それぞれについて 」とあります。「それぞれに」とあるので、1つだとか2つだとかについて書くのでなく、3つの事すべてに関して書きます。もしも2つとか1つについてしか書いていなくても、さすがにいくらかの点はもらえるかも知れませんが、3つという要件が満たせていないので、それなりに減点される危険が大きいでしょう。

    無難な解答の仕方のひとつを挙げると、
    「 筋力の低下を考慮して~すると良いだろう。」
    「 視覚機能の低下を考慮して~すると良いだろう。」
    「聴覚機能の低下を考慮して~すると良いだろう。」
     という具合に、3つの文章を単調に、箇条書きに近い感覚でツラツラと書くいう書き方があります。あまりに機械的で、文学性のかけらも無い様な文章です。しかし、この2019年の出題に対する回答としては、決して悪い書き方ではなく、むしろ適した書き方のひとつと言えます。

    問題文に書かれたルールを守って回答している以上、文学性が無い事だけが理由で大減点されるとは考えにくいです。私自身も、日常的に、人とのコミュニケーションでこういう文章を書きはしないものの、検定試験や資格試験の回答ではこの様に文学性がまるで無い様な文章を書く事がよくあります。

    出題の要件についてさらに注意して読み進めてみましょう。「 一般的に配慮すべきこと」とあるので、現在、世の中や業界で一般的である事について書きます。「こういう画期的な方法を思いついた」とか「私はこういう事をこれから世間に広めていきたい」という独創的な事を書いてしまうと、おそらくこれも高得点を取りにくいでしょう。出題者側が一般性のある話についての回答を要求しているのに、その要求に噛み合わない、自分だけが持っているようなアイディアの話をしてしまうと、これまた回答の要件を満たしていないという事になってしまいます。

    この様に、問題文の指示をよく読み、要件は何か、という事を読み取って、その要件を満たす様に書いていきましょう。その際に役に立つ手法があります。よく使われるのは、問題文中の、大事な指示やキーワードだと感じる部分に、アンダーラインや囲み線を書き込むという方法です。二次試験ではちょうど、製図用の道具として色鉛筆の持ち込みが許可されています。それを使ってアンダーラインや囲み線を色付きにして見やすくしたり、大事な部分を強調してうっかりミスを予防する事ができます。さらに応用技として、プラス、強調など、肯定的な意味の部分は赤、マイナス、否定、禁止、除外などの意味の部分は青、といった様に色分けするなどすると、ビジュアル的に文章が分かりやすくなる場合もあります。自分なりにミスを防ぐ方法を準備しておきましょう。


    読み手に伝わる回答のしかたをする

    ここまでは、どんなルールがあるのかを理解して、きちんと対応するという事について考えてきました。
    ここからは、問題の内容を問わず、もっと言えばインテリアコーディネーター試験だけに限らない、一般論として回答する上で守るべき日本語作文の鉄則について考えていきましょう。
    採点官は、よほどの偶然がない限り、会ったこともない、全く知らない相手です。その採点官でも、意味を理解できるような書き方をする事が必要です。そして、別の意味にも受け取れるような(いわゆるダブルミーニングの)文章を書かない事も大事です。そのためには、日本語の文法を守って、できるだけ平易な言葉遣いでシンプルに書くというのがポイントです。

    そのための作文技術には、次のようなものがあります。

    一文を短く書く

    文の先頭から「。」 までをできるだけ短く書きます。
    接続詞がいくつも入った長い文は読みづらく、読み手が意味を理解できない事もあります。特に、
    • 「~だが、~だが、~である。」
    • 「~なので、~なので、~である。」
     と、同じ接続詞が1文に繰り返し入る文は、絶対に書いてはダメ、という位の感覚で居るぐらいでちょうどよいと思います。
    同じ表現をしたい場合、例えば
    • 「~だ。しかし、~だ。とはいえ、~だ。」
    • 「~だ。なので、~だ。なので、~だ。」
    と言う具合にも表現できます。おそらくこの方が読みやすいでしょう。まず「。」で1文を短く終わらせてしまいます。そして次の文頭に接続詞を付けて前の文との関係性を示すようにするのです。すると、比較的分かりやすい文章ができます。 これを、「1つの文に言いたいことは1つだけ」と言い方をする人も居ます。それもわかりやすい言い方だと思います。

     結論を先に書く


    まず、結論を先に書くという事を意識しましょう。できれば避けたいのは「(長文)~なので、 ~だ。」と、結論にたどり着くまでが長い書き方です。なぜなら読み手にとってなかなか結論がわからなくて、しかも読むのに時間がかかるからです。場合によっては結論の内容を、読み間違えられてしまう危険もあります。日本語では、文法の性質上、どうしてもそうなりやすいです。しかし意識して避けるようにした方が無難です。試験で同じ様な内容を表現したい場合、なるべく、「~だ。なぜなら~だからだ。」という形式にするのです。「~なので、 ~だ。」という事を書きたいと思ったら、「。」を中間に入れてで文章を2つに分けます。そして文の順番をひっくり返し、「~だ。」という結論を書いた部分を先頭に持ってくる様にします。そして、そのあとの理由を説明する「~なので」の部分は少し変形させて、文頭に「なぜなら」という言葉を付けます。英語の、「because」という接続詞の単語が入る文を直訳すると、ちょうどこんな書き方になりやすいですが、そのイメージに近いです。この書き方にすると結論がどの部分なのかが分かりやすくなり、読んだ人に書き手の意図と違った伝わり方をしにくいです。試験の回答のしかたとしては使える書き方のひとつです。


    以上が、論文試験の形式的な事に関する得点力アップのヒントです。ほかに、内容的な事に関するヒントもありますので、興味のある人は下のリンクから進んで読んでみて下さい。

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