プレゼンテーション試験のスピードアップ作戦 ―ポイントトレーニングでスピードアップ―

ここでは、インテリアコーディネーター試験の二次試験のプレゼンテーション試験での作図のスピードアップにつながるトレーニングの方法について説明します。

それほど頭を使わずに短時間でできる単純なトレーニングばかりを用意しました。なので、多少仕事で疲れているような時でも、ちょっとした細切れの空き時間や休憩時間でも、有効に試験対策に活用してもらえるのではないかと思います。18mmの方眼紙と、 試験で使うシャープペンシルと定規のセットを通勤用のバッグのにいつでも入れておいて、空き時間にさっと取り出して2-3分のトレーニングを行なう、という事を繰り返すだけでも効果はあるでしょう。

間仕切り壁の厚みは測らずに目分量で

もしも今、間仕切り壁の厚みを律儀に三角スケールで測っているのなら、目分量で決められる様に練習するとスピードアップにつながります。

一般的な住宅の間仕切り壁の厚さは、70mm程度です。試験でもこれぐらいのものが想定されています。壁の内部構造はどの様になっているのかというと、よくあるものでは
  • ビニールクロス等の仕上材
  • 石膏ボード 12.5mm
  • 下地材─垂木(一三一五/一五一三)の長手またはLGSの角スタッド 45mm
  • 石膏ボード 12.5mm 
  • ビニールクロス等の仕上材
この様なサンドイッチ的な構造になっています。ハウスメーカーや大手ゼネコンのマンション、大手リフォーム会社では一般的な仕様です。この厚みに対して±10mm前後異なる場合はありますが、まるでかけ離れた厚さという事はありません。この寸法で作図しておけば、厚みがおかしいという理由で減点される心配はまず無いでしょう。厚みのあるビニールクロスで仕上げたり、珪藻土などの左官仕上げにする場合、その分の厚みが加わるため、壁の厚みは厳密には数ミリ程度厚くなります。しかし、1/50や1/100の平面図にした場合には見分けが付かず、ましてや手書きで製図する場合に描き分けられるような違いではないので、そのような僅かな違いは無視して作図してしまって構いません。ただし、3連以上の引戸など、特殊な建具の配置を計画する場合は、明らかに通常の間仕切り壁とは異なる厚みの大きい壁が必要な場合があります。インテリアコーディネーター試験では1/50の平面図が出題される場合が多いわけですが、1/50の図面ならば、作図の寸法上もその厚みの違いを反映して、その壁が他の壁よりも厚いという事をビジュアル的に表現しておいた方が良いと思います。

70mmの壁というと、1/50の縮尺では1.4mmです。ですので、間隔が1.4mmの平行線を、スケールを使わずに目分量の間隔で引ける様になればよいのです。難しそうに感じるかも知れませんが、何度か繰り返し描くだけで自然とマスターでき、それほど難しくはありません。さらに言うと、多少厚みに誤差が合ったとしても、それが例えば±0.1mm程度であれば減点される心配すら要りませんし、それを多少超えるような誤差でも、どの辺りから減点されるかは分かりませんが、そこまで重大な減点にはならないでしょう。とは言え、ひと目見て極端に厚過ぎたり薄すぎたりすれば、壁に関する基礎的な知識が無いという、別の疑いを招く可能性があります。そこまで行かない場合でも、壁の厚みのバラつきの激しさが目立つようであれば、製図全体の丁寧さが不足している人だという印象を与えてしまいかねません。その事で直接減点されるのはわずかだとしても、採点官が図面全体に対して持つ印象が悪くなり、評価の方向性に影響する可能性もあります。丁寧に真面目に描いてあるという印象を与えれば全体にわたって好意的な採点姿勢になり、反対におざなりで不真面目だという印象を与えれば極端に言えば粗探しをされるような事になってしまいかねません。試験の採点は感情抜きで冷静に行われるべきだとは思いますが、受験者全員分の採点にはある程度の人数の確保が必要です。冷静に採点してくれる有能な採点者ばかりだという期待はせず、いくらか気分に左右される採点者であっても好印象を得られるようにという視点も持った方が現実的でしょう。
しかし、それも常識的な範囲で気をつければ十分な話で、壁の厚みにばかりそこまで過剰に神経質になる事はありません。採点は、将来的にはAIで行われる時代が来るかもしれませんが、実用化にはまだ時間が掛かるでしょう。もうしばらくは人間の目で見て行っているでしょうから、目で見ておかしくない様に描ければ大丈夫です。
また目分量のスキルが役立つのは壁の厚みに限りません。家具でも設備でも、定規の目盛を当てていないのに妥当な寸法で描ける、という状態になると作図をスピードアップできます。

よく登場する家具は「迷わずに早描き」できるように

インテリアコーディネーター試験の二次試験では、ダイニングテーブルやソファなどの家具がほぼ毎回の登場します。それらの具体的な形状について「どの様なテーブルにするか」「どの様なソファにするか」といった事を試験時間中に考え始めてしまうと、時間をロスしがちです。もちろん、「こういうテーブルにしなさい」など、問題文中に指示があれば、それに合わせた形状を考えなければなりませんが、ただシンプルに「ダイニングテーブル」「ソファ」などの指示しか無ければ、具体的な形状は、受験者が自由に考えて良いという事です。そうした場面であれこれ考えて手が止まってしまうような事なく、作図の作業が途切れずに進むように、決まった図形をパターン化して、さらに描き順なども練習して、迷わずにどんどん描き進められるようにしてしまうのが実利的です(下の図を参照)。


インテリアコーディネーター試験によく登場する家具を平面図上で定型化した例

ここでは四角いダイニングテーブルとダイニングチェア、四角いソファを載せてありますが、これと同じ形である必要はありません。例えば、テンプレートを上手に利用すれば円形のテーブルや半円型のラウンジチェアの形状が速く描けたりします。人によって速く描きやすい形状だとか、感覚的にしっくりくる形状などは違いますので、自分に合ったものを描くようにするのが良いです。本質的に必要なのは、レギュラー化した家具の形状を自分の頭の中に準備しておくという事です。それによって、試験の本番中に迷ったり、試行錯誤をしてしまう事による時間のロスをなくす事ができれば良いというだけの話です。
ダイニングテーブルやソファの他にも、ベッド、子供の学習机、キッチンカウンターといった家具や設備もよく登場します。過去問題を眺めてみたりなどして「この家具はよく登場するなあ」なんて感じたものは、準備しておくと良いでしょう。

直線を効率よく引く

一本の直線を引く場合にも、

定規の位置合わせをする → シャープペンシルで線を引く

という、2段階の手順があります。このうち、定規の位置合わせをするという動作は、どれだけ急いでいても、きっちり行う必要があります。いくら線がシャープできれいに引けていても、位置合わせが甘くてあちこちちょっとずつズレているような図面だと、丁寧に描いていない印象になってしまいます。もちろん練習によってスピードアップはできるのですが、ある程度は丁寧に行なう必要があり、動作そのものを短時間で行うという事もすぐに頭打ちになってしまいます。
そこで知恵を働かせて、時間のかかる定規の位置合わせの回数をなるべく少なくできるように、という事を考えてみましょう。
例えば、一度定規を置いたら、その直線上にある線を極力まとめて引く、というのはひとつの方法です。その習慣を付けると、実際に早く製図が仕上げられる様になります。具体的にどういう事か、図で見てみましょう。
インテリアコーディネーター試験でよく使える描き順のテクニックの説明図

他にもまだあります。
定規を90°回転させるとだいぶ時間が掛かってしまいますが、平行に動かすだけならば比較的短時間でできます。なので、タテの線、ヨコの線を交互に描いたり、ランダムに描いたりするのでなく、タテの線ばかり連続して描いたり、ヨコの線だけ連続して描いたりすれば、定規を回転させる事なく平行に動かすだけで済みます。
この様に、効率の良い線の引き方には色々な手法があります。自分なりのオリジナルのテクニックを考え出してみるのも良いでしょう。パズルの様な面白みも感じられるのではないでしょうか。

非常事態ではタブーを犯す柔軟性も


例えば伝統的な製図の教えでは、三角スケールで線を引くという行為は、やってはいけないタブーのひとつとされます。これはインテリアコーディネーター試験に限りません。しかし、現実的に、三角スケールだって、凹みや傷がなければ、直線を引けます。制限時間に間に合わせるために少しでもスピードアップをしたい状況ならば、タブーを犯す事もやむを得ないのではないかと私は思います。たまたま試験の本番で、あと何本かの線を引きたいのに時間が足りなくなりそうな状況になってしまったとします。その時三角スケールを手に握っているとします。その三角スケールで、線は引けてしまいます。そんな状況でもわざわざ別の定規に持ち替えて、別の定規で線を引かなければならないでしょうか。そのために本番の試験が時間オーバーになって不合格という結果だったならば、それは勿体無い話です。確かにたくさん練習を積めば、定規を持ち替えても十分制限時間内に完成させられる様にはなります。しかし、受験者それぞれには仕事や家庭の都合もあって、満足な練習時間を確保できる人ばかりとは限りません。背に腹は代えられないシビアな状況の中で、練習不足を知恵やその場の機転で補う必要に迫られる事だってあるでしょう。そういう練習も、日頃から過去問題や想定問題を解く際に行っておく事をおすすめします。
この様な事にどうしても抵抗があるのならば、三角スケールに代えてヘキサスケールを導入するのも手です。ヘキサスケールは、従来は使用を禁止されていた道具でしたが、近年許可されるようになったものです。ヘキサスケールならば、もともと線引きとしての機能もあり、製図の作法としても、線を引くのに使うことは問題ないとされています。そのように、持ち物を自分なりに工夫して、少しでも時間を節約できる方法を考えてみるのも良いと思います。



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