[一次試験]迷いそうな寸法(2)「手すりの直径」
[インテリアコーディネーター一次試験・過去問題の解説] 2021年(第39回)第35問 エ
階段の手すりで断面が円形の場合、成人に握りやすい直径はどれか(文章は少し変えてあります)
(1)15mm (2)35mm (3)55mm
正解は(2)35mmです。
(1)は明らかに細すぎると思う人がほとんどかと思います。残る(2)と(3)は迷うのではないでしょうか。
直径55mm程度の手すりはそう珍しくなく実在しています。みなさんの身近な所にあるかも知れません。それなのになぜ、と思う人も居るのではないかと思います。
昔の正解が今の不正解
2000年以降、日本の社会保険制度に介護保険が加わってから介護に関する調査研究が大きく前進しました。その中で、手すりの直径は35mm前後(28-36mm)が実際に機能的だという事が明らかになりました。こうした研究結果に沿って、現在の既製品の手すりは、直径32mm-35mm程度のものが多く流通しています。
それ以前の手すりはというと、もっと太いものが主流でした。50mmだと細めの標準、60mmだと太めの標準、という感じで、この問題の選択肢(3)の55mmならば標準的な範囲内の、ごく普通のものでした。
35mm前後が標準とされ始めたのは20年ほど前の話なので、設計や施工の現場の認識としてはもうすっかり浸透していると思います。ただ、建物や、そこにある手すりというのは一般的に耐久性があって長く使われます。1990年代以前に取り付けられた手すりが今日でも使われているケースはそう珍しい事ではありません。
直径を数値的に把握していない受験者は感覚を頼りに選択肢を選ぶ事になると思いますが、その時になんとなくこれぐらいかなあ、というイメージで(3)と答える回答者が多いだろう、という出題意図が見えてくる気がします。なかなか痛い所を突いている問題だと思います。
受験生の世代によっても手すりの太さのイメージが異なっていて、正解率に違いがあるという事もあるかも知れません。
この手すりの直径は、身の回りの物の寸法を実際に測ってみるという学習方法で不正解になってしまう危険性のあるレアケースです。しかしそれでもなお、インテリアコーディネーター試験の受験勉強をするにあたり、身の回りの物の寸法を実際に測ってみて寸法を把握するという学習は大いに効果的な学習方法のひとつだと思いますので、私は推奨します。自分で測った色々な結果をしっかりと記憶している人ならば、たまたまこの問題が不正解になってしまったとしても、他のはるかに多くの問題で正解できるでしょう。
そうは言ってももちろん、当問題のようなケースにも対応できるように、実物を見て養った経験的な感覚と、座学で習得した情報と、両方を持ち合わせている事が理想的なのは言うまでもありません。
社会的なニーズを反映して、介護やバリアフリーに関連する寸法の出題はインテリアコーディネーター試験でも一次・二次試験ともに近年増えてきました。試験直前で目を通しておくと良い分野のひとつです。