[一次試験] 過去問題の難問―2021年度(第39回)第48問3「内装制限」
2021年度(第39回)第48問3の解説
出題内容は概ね次のようなものです。(著作権の都合上文言は完全に同じではありません)。
【問題】下の文の(?)に当てはまるものを選ぶ
木造 3 階建て住宅の火気使用室が(?)にある場合、その火気使用室は内装制限の対象にならない。
【語群】 1.1階 2.2階 3.3階
【語群】の中から「3. 3階」を選ぶと正解です。
市販のテキストにはそこまで詳しい解説が載っていないという事も考えられますので、ここでクローズアップして取り上げます。
正解するには「制限の対象になるもの」を単純に考えるのではなく、法令の2つの条文の内容を同時に考えて「制限の対象になるものから除外されるもの」を考えなくてはならず、インテリアコーディネーター試験の中ではかなりの難問の部類に入ると思います。
詳しく理解したい人が参考にできるように根拠条文も載せておきますが、インテリアコーディネーター試験に合格できるレベルを目指すのに条文まで読み込む勉強は必須では無いと思いますので、特に興味のある人以外は細かい話は飛ばしながら読んで下さい。
この問題には「木造3階建て住宅」とサラッと書いてありますが、これがこの問題の難しい部分です。確信を持って確実に正解するためにはこの短い部分に書いてある「木造」「3階建て」「住宅」のそれぞれを細かく意識して読む事が必要です。
ただ出題のしかたとしては「火気使用室が何階にある場合、内装制限の対象にならないのか」という訊き方をしているので、あまり悩まずに「どれかの階だけが対象にならないという話なんだろう」と当たりは付けられます。もちろんそこを回答の手掛かりにしない手は無いでしょう。ただ、そこから先の段階で必要な知識もだいぶ高度なものです。
その辺りを省略せず丁寧に考えていくとすれば、まずはじめに、3階建てというところでひとつ判断をします。住宅は特殊建築物ではありませんが、階数が3以上だと、建物の火気使用室(例えばコンロのある調理室など)は一部を除いて内装制限(火事が広がりにくい内装にすること)が必要だと定められています。(建築基準法第35条の2)
この問題文には「木造3階建て住宅」と書いてありますのでそこでまた判断します。ただ単に木造と書いてあるだけなので主要構造部が耐火構造とは考えられません。なのでAには該当せず、その理由では内装制限の対象外にはなりません。出題者はこのことを意識してわさわざチョロっと「木造」のひとことを挟んでいます。
Bは「住宅の最上階」という、用途と階の話です。主要構造部が耐火構造でなくても用途と階さえ合致すれば該当します。3階建ての建物の最上階といったら、3階の事です。ですから、正解は「3階」です。
はじめにも書いたように出題のしかたから当たりを付けて一気にここまでワープして考える事ができるにはできますが、それでも、「木造3階建ての建物の火気使用室であっても、用途が住宅で最上階ならば内装制限の対象から除外される」という知識は、それだけでなかなかの知識だと思います。
しかも「最上階」というキーワードを一切出さずに構造種別・階数・用途だけをサラッと示してその知識が出てくるかどうかを試すという、出題の仕方もこれまた本格的に意地悪です。
例えばニ級建築士試験ならば、この条項に関する知識は必須のものだと思います。ただ建築士試験の場合は法令集の持ち込みができますので、うろ覚え程度に覚えておきさえすれば十分です。法令集の持ち込みができないインテリアコーディネーター試験でこんな細かい知識を何も見ないで答えさせるような出題をしてくるなんて、最近の試験内容はかなりハードになったと感じます。私が覚えていないだけで、昔から出題されていたのならすみません。
特にこの問題に関連している内装制限の条項は、「除かれるものは~以外のもの」という、独特の読みづらい書き方が有名にもなっているほどの、ややこしい条項です。かまいたちの漫才のネタかよ、なんて思いますよね。
色々ボヤいてみたところで実際に出題されてしまっているので困ったものですが、とりあえず受験対策としては、
- 3階建ての建物の火気使用室は内装制限の対象になる
- 建物の主要構造部が耐火構造だった場合は対象から外れる
- 耐火構造でなくても、用途が住宅で、最上階だった場合は対象から外れる
という3つのポイントだけ覚えておけば良いのかな、と思います。しかしこれだけでもかなりの上級者という気がします。
もちろん正解できた方はあっぱれですが、この問題でもしも正解できなかったとしても、そんなに気にしなくても良いと思います。上に書いた事がすんなり理解できる人は理解して、理解できない人はあまり悩みすぎて時間を無駄遣いする事なく、もっと難易度の低い他の問題で確実に点を取れる様に勉強時間を使うという事(いわゆる捨て問題)でも良いのではないかと個人的には思います。