2021年の問題を深掘り(1)東面のキャビネットの妥当な設計
インテリアコーディネーター過去問題(2021年)の二次試験の、リビング東面のキャビネットの設計について、一般的なテキストの解説程度では詳しい事を省きすぎていて腑に落ちないという人や、どの様な考え方をしてこの答案にたどり着いたのか分からない、という人も居ると思います。ですのでどの様な事を考えると妥当な設計ができるのか、実際に解答サンプルを作りながら少し詳しく掘り下げてみます。手持ちの過去問題集の補足資料的な位置づけとして読んでみて下さい。
過去問題集を読みながらでなくても分かるように、条件と設問の内容もひと通り掲げておきます。
ワインセラーのサイズは実寸W380xH1200xD480、設置スペース内寸W420xH1300xD500
実際に順を追って解答を作成して行きます。
最初にまず平面で全体的な配置を考えます。
条件でなくエピソード的な部分に書いてありますが、依頼主は5-6人で壁掛けのテレビを観るという事です。その場合にテレビを端のほうに計画してしまうとこの様に画面を見づらくなる人が現れます。
ですのでテレビの位置は概ね中央辺りと決めます。
そしてデスクとワインセラーをテレビの両側に配置します。どちらかと言えば、南の大きなテラス窓の前の心地よさそうな場所をを家電の置き場にするよりも、人が過ごすスペースにした方が良いと思いますので、デスクを南側に配置します。この問題ではワインセラーの置き場所はペリメーターゾーンにせざるを得ませんが、もしも可能なケースだったならばワインセラーは比較的温度変化の少ないインテリアゾーンに設置するほうが設置条件が良いですので、配置決めの要素のひとつにすると良いでしょう。インテリアでどこにも短所のないレイアウトいうものはほぼ不可能ですので、ほとんどの場合「こうすれば総合的に見てマシ」という、プロコンの相対的な比較で案を出します。人により賛否が分かれる事もあります。ただ、試験では少数の人だけが支持するようなトガった計画は避けた方が良いです。「基本を知らない人」だと思われてしまう危険があるからです。
見付の幅の配分と、各部分の奥行き(見込)を決めます。このサンプルでは、見付の幅については、両端のデスクとワインセラーを具体的に決めて、中央のTV設置部分はそれらを差し引いた残りとして考えています。もちろん計算をしても良いのですが、インテリアコーディネーター試験では電卓が使えないので面倒だと思います。「計算しなくても次の手順に進める事は計算しないまま進む」というのも、解答のスピードを上げるテクニックのひとつです。
過去問題集を読みながらでなくても分かるように、条件と設問の内容もひと通り掲げておきます。
条件等の整理
全体的なエピソード
- 物件はファミリータイプのマンションの角部屋
- 依頼主は子供が育ち上がって家を出ていった50代夫婦
- 友達を3-4人家に招いて50型テレビでスポーツ観戦できる環境をつくりたい
依頼主の要求条件
- 東側壁面の幅いっぱいにキャビネット(高さ2100)を設ける。
- 上部にコーブ照明を設置する。
- キャビネットには、50型のテレビ(幅1200×高さ650)を壁掛けで設置する。
- 書き物用のデスクを造り付ける。
- テレビ、デスクの他の部分に家庭用ワインセラー(下に書いた寸法のもの)を設置する。
- 家庭用ワインセラーの前に扉はつけない。
- キャビネットは、扉付き棚、ガラス扉付き棚、オープン棚などでバランスよく構成する。
―その他―
テレビのサイズはW1200xH650ワインセラーのサイズは実寸W380xH1200xD480、設置スペース内寸W420xH1300xD500
(設問-2)LD東側壁面のキャビネットの正面図と断面図の作成
- キャビネットの正面図と断面図(デスクの位置での断面)を作成する
- キャビネット上部のコーブ照明を適切に表現する。
- 主要な寸法と仕上げ材を記入する。
- テレビと家庭用ワインセラーは、外形線のみを図示する。
- デスクの手前に椅子は描かない。
- 室内に梁型の露出はないものとする。
解答サンプルの作成
諸条件と設問は上の通りです。実際に順を追って解答を作成して行きます。
最初にまず平面で全体的な配置を考えます。
条件でなくエピソード的な部分に書いてありますが、依頼主は5-6人で壁掛けのテレビを観るという事です。その場合にテレビを端のほうに計画してしまうとこの様に画面を見づらくなる人が現れます。
ですのでテレビの位置は概ね中央辺りと決めます。
そしてデスクとワインセラーをテレビの両側に配置します。どちらかと言えば、南の大きなテラス窓の前の心地よさそうな場所をを家電の置き場にするよりも、人が過ごすスペースにした方が良いと思いますので、デスクを南側に配置します。この問題ではワインセラーの置き場所はペリメーターゾーンにせざるを得ませんが、もしも可能なケースだったならばワインセラーは比較的温度変化の少ないインテリアゾーンに設置するほうが設置条件が良いですので、配置決めの要素のひとつにすると良いでしょう。インテリアでどこにも短所のないレイアウトいうものはほぼ不可能ですので、ほとんどの場合「こうすれば総合的に見てマシ」という、プロコンの相対的な比較で案を出します。人により賛否が分かれる事もあります。ただ、試験では少数の人だけが支持するようなトガった計画は避けた方が良いです。「基本を知らない人」だと思われてしまう危険があるからです。
見付の幅の配分と、各部分の奥行き(見込)を決めます。このサンプルでは、見付の幅については、両端のデスクとワインセラーを具体的に決めて、中央のTV設置部分はそれらを差し引いた残りとして考えています。もちろん計算をしても良いのですが、インテリアコーディネーター試験では電卓が使えないので面倒だと思います。「計算しなくても次の手順に進める事は計算しないまま進む」というのも、解答のスピードを上げるテクニックのひとつです。
また、妥当性のあるサイズであれば必ずしもキリの良い寸法である必要はありませんが、このように平面図・立面図・断面図をそれぞれ作図する場合は、キリの良い寸法にしたほうが作図しやすいです。
デスクは「書き物用」というニュアンスからすると、そんなにハードに仕事をしたり勉強をしたりするためのものではないと思いますので、どちらかと言えばコンパクトなサイズで計画するのが妥当でしょう。ワインセラーの収納部分は、問題文の寸法をよく見て、収納できる寸法を確保します。空間の寸法が足りないのはもちろんダメですが、過剰なゆとりも、空間の有効利用の観点からすると好ましくないと判断される可能性がありますので要注意です。それ以外の部分の奥行き(見込)の寸法については、概ね次のような事を考慮して決めると良いと思います。
以上を総合的に考えて、ここでのサンプルではデスクとワインセラー収納部分以外の奥行きを300mmとしました。他には、デスクの奥行きに合わせて、家具全体を「ツライチ」に設計するという考え方もあると思います。公式サイトに2つある解答例のうちの片方は奥行き550mmでその様な設計になっています。ただ、実用上ちょっとデスクは奥行きが浅過ぎ、デスク以外の部分は逆に深すぎるのかなという気もします。しかしおそらくこの解答例の図面を描いた人は合格しているでしょうから、採点者はそんなに厳しく採点していないと思います。もし気になる人は、収納部分が深くなりすぎない様に背板を手前側にふかすという手法もありますので知っておくと使える時もあると思います。ただ、そういうのを空間の無駄遣いとして好まない業界人も一定数は居ます。なのでふかした奥の空洞的スペースを無用途のままにしておかず、断面図に「通気スペース」「配線スペース」等の用途を文字で書き込んでおくとより安心です。ただ、いずれにしても受験の準備がかなり仕上がっている人が、より一層心配を無くしたいという様な場合の話ですので、とにかく合格ラインをパスできればいいという場合にはそこまで細かい心配をしなくても大丈夫だと思います。
次に、高さ方向の寸法を考えて行きます。
ワインセラーの部分は、問題文で指定された寸法が収納できるサイズにすれば自動的に決まります。デスクについては、天板高さが床面から概ね700mm程度ということで一次試験にもよく登場しますので、ほとんどの受験者が理解していると思います。
テレビの部分は、まず、ソファに座った人の目の高さがテレビの中心辺りに来るように、最初にテレビの床面からの取付高さを計算で求めると良いでしょう。わずかに見下ろす角度だと目が疲れにくいとも言われます。それを反映してもよいでしょう。
テレビを中心にしてその周りの寸法も決めて行きます。
テレビを取り付ける作業の事や、立ったりソファの上に寝転んだりしてもテレビが見やすいようにという事を考えて、テレビの上下は多少のクリアランスを確保した方が良いでしょう。以上の事をふまえて、全体を計画します。参考のために平面図も載せておきます。
学習の参考用として、上に書いた以外の事について、このサンプルについてやや詳しく補足をしておきます。
寸法やボイドを示す一点鎖線も、学習の参考用としてやや詳しく入れておきました。インテリアコーディネーター試験で合格できるための答案としてはここまでの描き込みも、検討も不要です。
しかし、說明を端折られてしまうと根本的な部分からきっちり理解できなかったり、モヤモヤして気になり続けたりする人も居ると思いますので、そういう人に向けた說明と思って下さい。私自身もそういう事が多いタイプです。
実務でも最初の計画段階ではここまで詳しい内容の図面化は不要な場合が普通だと思います。段階を踏んで詳しく設計して行き、最終的にはこれよりももっと細かい部分まで詰めます。
ただし構造方法などについては、設計者の頭の中の片隅にある程度現実的な想定があった方が良いです。そうすれば依頼者に安心感を与えるような說明がちゃんとできたり、後で大幅な計画変更をしなくて済んだりします。
デスクは「書き物用」というニュアンスからすると、そんなにハードに仕事をしたり勉強をしたりするためのものではないと思いますので、どちらかと言えばコンパクトなサイズで計画するのが妥当でしょう。ワインセラーの収納部分は、問題文の寸法をよく見て、収納できる寸法を確保します。空間の寸法が足りないのはもちろんダメですが、過剰なゆとりも、空間の有効利用の観点からすると好ましくないと判断される可能性がありますので要注意です。それ以外の部分の奥行き(見込)の寸法については、概ね次のような事を考慮して決めると良いと思います。
- 壁掛けテレビの上下左右の端部や取り付け部分の金具等は目立たないほうが見栄えが良いので、壁掛けテレビのツラよりも家具のツラの出幅を大きくする(50型テレビを壁掛けにしたときの奥行き寸法は取付金具込で150mm程度が一般的です。)。
- テレビの上の収納は無柱のスパンが必要であり、奥からの片持ち式の構造で設計する場合は、強度を考えると奥行きを大きくし過ぎない方が良い(下の断面イメージ図を参照)
- 収納家具としての実用性を考え、ブルーレイレコーダーやA4サイズの本程度は収納できるぐらいの奥行を確保するのが適切(下の說明図を参照)。
- 人間工学的に物の出し入れがしづらくなったり、奥まで手が届きづらくなる事を考慮し、奥行は大きくしすぎない方が良い。
以上を総合的に考えて、ここでのサンプルではデスクとワインセラー収納部分以外の奥行きを300mmとしました。他には、デスクの奥行きに合わせて、家具全体を「ツライチ」に設計するという考え方もあると思います。公式サイトに2つある解答例のうちの片方は奥行き550mmでその様な設計になっています。ただ、実用上ちょっとデスクは奥行きが浅過ぎ、デスク以外の部分は逆に深すぎるのかなという気もします。しかしおそらくこの解答例の図面を描いた人は合格しているでしょうから、採点者はそんなに厳しく採点していないと思います。もし気になる人は、収納部分が深くなりすぎない様に背板を手前側にふかすという手法もありますので知っておくと使える時もあると思います。ただ、そういうのを空間の無駄遣いとして好まない業界人も一定数は居ます。なのでふかした奥の空洞的スペースを無用途のままにしておかず、断面図に「通気スペース」「配線スペース」等の用途を文字で書き込んでおくとより安心です。ただ、いずれにしても受験の準備がかなり仕上がっている人が、より一層心配を無くしたいという様な場合の話ですので、とにかく合格ラインをパスできればいいという場合にはそこまで細かい心配をしなくても大丈夫だと思います。
次に、高さ方向の寸法を考えて行きます。
ワインセラーの部分は、問題文で指定された寸法が収納できるサイズにすれば自動的に決まります。デスクについては、天板高さが床面から概ね700mm程度ということで一次試験にもよく登場しますので、ほとんどの受験者が理解していると思います。
テレビの部分は、まず、ソファに座った人の目の高さがテレビの中心辺りに来るように、最初にテレビの床面からの取付高さを計算で求めると良いでしょう。わずかに見下ろす角度だと目が疲れにくいとも言われます。それを反映してもよいでしょう。
テレビを中心にしてその周りの寸法も決めて行きます。
テレビを取り付ける作業の事や、立ったりソファの上に寝転んだりしてもテレビが見やすいようにという事を考えて、テレビの上下は多少のクリアランスを確保した方が良いでしょう。以上の事をふまえて、全体を計画します。参考のために平面図も載せておきます。
平面図 |
学習の参考用として、上に書いた以外の事について、このサンプルについてやや詳しく補足をしておきます。
- 材質の指定は特に無いので、T20のパーティクルボード、あるいはランバーコアを想定しています。これより多少の厚い薄いは許容されると思います。薄い材料で設計したい人は、例えば合板だと比較的薄くても強い材料があっておすすめです。
- 扉付きの収納スペースは、物の落下の防止の観点から高い箇所に計画しました。扉の種類は開き戸でなく引違い戸であっても使いやすいと思います。
- ワインセラーの直上に、グラスやワインオープナーの収納を想定してガラス扉の収納スペースを計画しました。
- テレビの両サイドの袖壁に関しては、間隔を狭くすれば上の棚のたわみを減らせますが斜めの角度からのテレビの視聴を妨げます。その両者のバランスを考慮し、間隔を決定しました。袖壁でなく、ポール(柱)的なもので支える設計にしても良いと思います。
- テレビの上の収納棚については、強度と背面側のスリム化を考慮し背面からの単純な片持構造としませんでした。棚板の手前側は1700mmという長いスパンでたわみやすいので、梁的な部材を配置しました(断面図で見えています)。ここは梁や幕板を設ける他に、中間部分を奥からの片持ちで支持したり、上に梁を設けて吊り下げたりなど、色々な構造を考える事ができると思います。
- デスクの直上にダウンライトを配置してありますが、デスクの明かりについては必ずしも工事になるようなものでなく、デスクランプを置くなど、色々な想定があって良いと思います。
- デスクの天板は固定式でなくドロップリーフ式などの可動式にしても妥当な設計と言えると思います。
- この年の問題ではこの位置に、しかも扉付きの棚などを計画するという明確な指示があるので心配せずどんどん収納家具を設計して構いません。しかし、どの場所に収納家具を配置するか、受験者に裁量が与えられている場合には、このように外壁沿いに壁面収納を配置するような計画は自ら進んで行わないほうが良いです。なぜなら強力な結露対策が必要になり、技術面でも予算面でも合理的とは言い難いからです。
寸法やボイドを示す一点鎖線も、学習の参考用としてやや詳しく入れておきました。インテリアコーディネーター試験で合格できるための答案としてはここまでの描き込みも、検討も不要です。
しかし、說明を端折られてしまうと根本的な部分からきっちり理解できなかったり、モヤモヤして気になり続けたりする人も居ると思いますので、そういう人に向けた說明と思って下さい。私自身もそういう事が多いタイプです。
実務でも最初の計画段階ではここまで詳しい内容の図面化は不要な場合が普通だと思います。段階を踏んで詳しく設計して行き、最終的にはこれよりももっと細かい部分まで詰めます。
ただし構造方法などについては、設計者の頭の中の片隅にある程度現実的な想定があった方が良いです。そうすれば依頼者に安心感を与えるような說明がちゃんとできたり、後で大幅な計画変更をしなくて済んだりします。