[一次試験]迷いそうな寸法(1)「イスの座面」の応用問題

迷いそうなイスの座面の高さ

第39回(2021年)第17問イに、こんな出題がありました(原文には著作権がありますので、少し文言を変えて書いてあります)。

―もっとも適当なものを選びなさい―

  • リビング要素を加味した大きめのダイニング家具
  • イスの座面高さはどれぐらいがちょうど良いか

[選択肢]

(1)380mm (2)450mm (3) 500mm

(ヒント1) 座面高さとは、下の図の部分の事です。

座面高さの説明図

(ヒント2) 一般的なダイニングチェアは、400-420mm程度だと大体の教科書には書いてあります。

正解は(1)380mmです。

(3)はしっかり腰掛けた時に大多数の人は足がぶらぶらしてしまいます。高すぎるのでさすがに違うかな、と思う人が多いと思います。

(1)と(2)はちょっと迷いそうです。一般的なダイニングチェアと比べると(1)はちょっと低め、(2)はちょっと高めで、(1)と(2)を直接比べるとその差は70mmあります。これ位高さに違いがあればだいぶキャラクターに違いがありそうなので、さてどちらかな、という話になってきます。座面高さを暗記しておく事に加えて、考える事も要求されるタイプの問題です。

「大きめのダイニング家具」という事ですから、全体的に大きいとか、体が大きい人に合わせたものなのか、と考えると、(2)を選びたくなってしまうかも知れません。「大きめの」と書いてある部分には、まさにそこで引っ掛けようしていそうな、出題者の意図が見え隠れします。

問題文の別の部分をよく読むと「リビング要素を加味した」とあります。そこからイメージをふくらませると、「ソファセットを置かずに、ダイニングセットで兼用して、ソファセット的に多少くつろげる雰囲気のものにしたいという事なのかな」というような方向性のストーリーが見えて来ます。ちょうど上のイラストのイスがそんな雰囲気のイスです。その線で考えて(1)380mmです。座面高さが少し低いと、足を少し前に投げ出してゆったりくつろいで座れるような雰囲気になります。問題文は直接的に言及しているわけてばありませんが、「大きめの」という部分にはきっと座面が一般的なダイニングチェアに比べて一回り程度大きくできていて、ゆったり座れる感じのものだと匂わせる意図もあるのでしょう。

ところで、ダイニングチェアの座面高さは覚えている人が多いと思いますが、ソファの座面高さに関してはどうでしょうか?

ソファの座面高さは、かなり多種多様です。低いものでは300mmを下回っているものもよくありますし、高いものではダイニングチェアより少し高いぐらいのものもあります。コルビュジエがデザインした有名なLC2などは、実物を見ると軽くびっくりするぐらい高いです。しかしソファは一般的に座ると座面が体重でだいぶ沈みますので、座った時の実質的な座面高さは見た目の座面高さよりもだいぶ低いです。

チェアでもソファでも、日本国内デザインのものは座面高さが少し低めで、グローバルな製品だとそれに比べて少し高めの傾向があります。また同じ日本国内デザインでも、最新のものは少し高めで、古いものは少し低めの傾向があります。日本人が欧米人に比べて体格が小さいという事、日本人の体格が変わってきた事、日本人が家の中で靴を履かないという事、日本人は西洋建築をそっくりそのまま模倣したのではなく日本在来の伝統的建築とミックスしながら独自の消化吸収をしてきた歴史などが関係していると考えられます。

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