[一次試験] 捨てるしかない問題の例(1) 2020年(第38回)第3問4

残念ながらインテリアコーディネーター試験では知識や理論では正解のしようの無い問題が稀に出題される事があります。時間の無駄でしかありませんので、そういう問題への対策は諦めて、他の問題の対策に時間を使った方が良いと思います。

その具体例です。2020年にはこのような問題が出題されました。


2020年(第38回) 第3問4

インテリアコーディネーターの職場における知識、サービスに関する次の記述の(?)の部分に、それぞれの語群の中から最も適当なものを選んでマークしなさい。

住宅のリフォーム業務では、耐震性能、( ? ) などの住宅性能の向上を提案することも望まれるため、より豊富な専門知識が求められる。

【語群】 

  1. リサイクル性能 
  2. 省エネルギー性能 
  3. 人間工学的性能

(著作権があるため文意を歪めずに少しだけ変えてあります)


正解は「3 .人間工学的性能」なのだそうです。

これは酷い問題です。

まず全体的な話をすると、1も2も3も全て適当な選択肢としか思えません。「最も適当なもの」と書いてあるだけに、「3肢すべてが適当だが、その中で他の2者と比較してさらに適当」という可能性はあります。しかしこの3肢の中で3だけが正解だとするのにはいくら何でも無理があり、論破王でなくても「それってあなたの感想ですよね?」と言いたくなります。

3が正解だという理由が分かる人には、理由を訊いてみたいです。ひょっとすると、ハンドブックにでも載っている文章の引用なのでしょうか。まさか「ハンドブックを読んで来たかどうかを確認する問題」という出題意図だとすれば、意図自体に問題があります。試験や資格認定の公益性が揺らぎます。仮にそこを一歩譲ったとしても、1と2の選択肢には正解に比べてもう少し適切性が弱いような選択肢を用意しなければならず、ここまで適切性の程度に差が無い選択肢ばかりを用意してしまったならば、試験問題としてもはや成立していません。正解の選択肢とそれ以外の選択肢には誰もが納得するような違いが必要ですが、それが見当たりません。

そもそも、インテリアコーディネーターは職場や業界で耐震性能の向上に関して提案を期待されるような存在ではありません。その部分から既に言っている事がおかしいです。基本的に耐震性能は建築士が担当する部分です。解釈を少し拡大してもそういう提案に関わるのは施工管理技士だとか、技能士合格レベルの各種大工や鉄筋工など躯体の施工に関わる技術者です。耐震性を考えるならば、一般的に建物に働く地震力と、それに抵抗する構造的な強度、材料的な強度に関して一定以上の知識が必要です。そこまでの知識がなくとも、せめて建築基準法の仕様規定を満足する設計をしなくてはなりません。インテリアコーディネーターはそんなノウハウまでカバーしていませんので、そこで専門性を期待される事などあり得ません。むしろ、建物の利用者の命にかかわる事ですから、インテリアコーディネーターの他にもそういう専門的ノウハウを持っているといった事でもない限り、なまじ手を出すなと言われる方がふつうです。論破王でなくても、「なんだろう、嘘つくのやめてもらっていいですか?」と言いたくなります。

この問題で間違ってしまい、なぜ3が正解なのか分からない、という人は、ご自身の本質的な知識や理解が足りないせいではないと思います。明らかに出題のほうがおかしいです。この問題の正解のしかたなど追求する意味がありませんので、この様な問題は捨てて、他の問題で点を取るために時間を使うことをおすすめします。

1点の違いで合否が分かれてしまう事もありますので、点が取れないというのは受験者にとって痛い事ではありますが、試験の実施者と受験者の立場ではどうしようもないものがあります。試験の実施者には、このような出題は今後ぜひともやめて、良識的な出題に努めてもらいたいものです。

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